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108 珍しく静か

 操作魔法の本を二、三冊取ってユアンと部屋に戻ると、レーヴィが起きてドレッサーで髪の毛を編んでいた。おっ、三つ編みだね。編み込みかな?おー、お淑やかなお嬢さんって感じがして可愛らしい。実際は全然お淑やかじゃないけどね。

 レーヴィは鏡越しにこちらを見て、目を細めて微笑んだ。


「ああ神楽、今日は早起きじゃのう。起きて隣に誰も居なかったから驚いたわい」

「へへ。なかなか寝れなくってさー」

「普通寝れんかったら遅く起きないか?神楽はせっかちじゃから」


 レーヴィは髪の毛を弄りつつ、くすくす笑う。

 えーっと、今日はこの本の三百六十五ページ?からか。えーと、『魔力概念とその利用法、及び利用法の違いについての考察』……ってとこからだね。

 レーヴィはこちらを振り返った後に見えた分厚い本三冊に、露骨に顔をしかめた。


「今日は休日と聞いておったが?」

「だからこそ本を読むんでしょ?」

「……そうじゃ……いや、もう何も言わん」


 なんだったの。

 小首を傾げてから椅子に座り、本を開いて読み始める。レーヴィはふーっと深い溜息を吐いてから、寝転がった。そのままゴロゴロと転がる。

 この著者はガッツリ書いてるから好きなんだけど、休日くらいしか読めないのが悲しい。

 もっとサクッと読めるのがあったらいいのに。要約して要約して、それでもまだ英和辞典くらいの大きさ・重さだもんねー。


 快適に本を読んでいると、少し風が来た。ん?


「ユアン、今風来なかった?」

「ああ、それはおそらく魔導具から来る風です」

「……魔導具?何それ」

「温度管理具という魔導具らしいのですが、私は詳しくありませんね……レーヴィ様なら知っているかと思いますが」

「知っとるぞ。温度管理具じゃろ?」


 レーヴィは唐突に起き上がると、出番が出来たのが嬉しそうだった。

 まあね、レーヴィはいっつも暇してるからねー。しかも最近出番なかったし。


「貴族の屋敷は温度管理が難しい。暖炉一つでどうにかなるもんじゃないからのう。そこで屋敷の中央部地下にあるのが、温度管理具じゃよ。屋敷中をカーッと熱くすることも、キーンと冷やす事も出来る」

「ほお~、すごい」

「すごいじゃろう?儂も感心しとるんじゃよ。魔導具作家はすごいものを作るなあ」


 ふーん、クリスタルみたいな形なのかな?それともまさに機械!って感じのコードぐるぐるのやつなのかな?見てみたいけど、地下じゃ行くの大変そうだし今度お兄様にお願いしよう。

 そういう魔導具についても魔力概念を知ってからかなり深く理解できるようになって、ますます興味が出て来たんだよなー。


 温度管理具なんて、すごい面白そうじゃん。どういう原理だろう。やっぱり温度が変わる時に生まれる魔力の差異、それを利用した魔導具か。それを逆転の発想で魔力の濃さで生まれる温度差を利用した……でもそんなの可能かあ?

 いや、可能だからこそ温度管理具なんていう者があるんだとは思うけど、その魔力はどこから補充されてるんだ?

 

 っあー、難しいっ!

 これは多分魔力概念じゃなく、魔導具の本に書かれてると思うなー。今度読んでみたい。


「確か手前の本棚にあったと思いますよ」

「ふうん、そっか……ってだから心を読むなっつってんの!」


 叫んで立ち上がると同時に蹴りを入れる。当然当たらず、躱された。

 そこへ追撃するように飛んで一回転続いて暴風刃。ユアンの頬を掠って、血が出た。いつもならここでぐーっ!ってなるとこだけど。

 残念、今の私はエリアスの血で満たされてんのよ!


「はあっ!」

「っと、」

「ええい!」


 もう一度蹴りを入れると、当たった。よし!と思って体勢を崩してしまい、それをユアンに抱き留められる。こいつ、何してやがる!

 暴れても、離れない。力強い!


「暴れないでください、落ちます!」

「落ちたっていい早く離せ馬鹿!」

「神楽!」


 レーヴィの叫び声で、ピタッと止まった。何、と思って振り返ると、居たのは意地の悪い笑みを浮かべた夢魔。こちらを観ながら楽しそうに笑っていた。

 こいつまさか!


「中々可愛らしいじゃあないか。年相応じゃぞ」

「何だと!?ほらユアン、言われたじゃんか滑稽だって!」

「言っとらんぞ。可愛らしくていいと言っただけじゃ」

「ほら滑稽だって言ってる!」

「言っとらんのじゃが……」


 私が牙を剥いてユアンから離れると、ベッドに着地した。本を手に取って、一回ユアンを睨み付けると本を開いた。

 ったくもう、やめてよね!そういう事するからニフテリザとか他の神様から疑われるんじゃん!

 ……………。

 他の神様から疑われる、って、中々言わないよなー。


「神楽、もっと甘えりゃいいのに」

「やーだね。甘える歳じゃない」

「思いっきり甘える歳じゃろうが。普通すぎるぞ。五歳で甘える歳じゃなかったら何歳までなんじゃ」

「一歳」

「ちっさ!」


 とまあ漫才をやりながら、本を読み進めていく。まだ一ページ目だよ。読むの早い方だとは思ってるんだけど、やっぱり漫才ちょこちょこ入れてると無理だな。

 あっ、この著者まで間違い!?有り得ないでしょ、何その魔獣は魔力を従えるのに超音波出す、って。これは魔力と意思疎通が可能って言ってるのと同じだよ!?


 魔獣が魔力を従えるのが可能なのは魔力と魔力の波が合致する場合のみだよ?しかも力が強ければ強いほど波が合致しやすくなるっていうのが通説レーヴィのなんだよ。

 私の周りが特殊っていうのが大きいからなー、私の中での当然が世の中では当然ではないんだけど。私と周りがマトモじゃないからかなあ。

 あー、まあ当たり前か。


 狼男に剣の一族、霊魂族に夢魔、人族を追い出された奴にエルフの『隔離者』、私は吸血鬼魔王で神様と友達。

 うん。


 ガチでマトモじゃない!


 

閲覧ありがとうございます。

今回は最近では珍しく平穏な回でした。最近かなりバタバタしてたので……。

次回、愛発さん、お久しぶりです。

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