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100 出逢いと別れをもう一度

 万智鶴さんとバチバチ目線で火花散らした後、話し合いが行われた。


「まずはセプス。次ニフテリザ。次クーストース。次ゾーロ。最後に私が話しましょう。皆さん、楽しんでくださいね。時間遡行で倒れた直後に戻れますので安心してください」

「……」


 あのね、この際隠してもアレだから言っちゃうね。

 私、蜘蛛と里と万智鶴さん、大嫌いなんだよね。蜘蛛は言わずもがなだし、里も嫌い。万智鶴さんは、私を死なせた相手を好きになれるはずもなし。

 ま、私は好き嫌いって言う私情を入れないように気を付けないと、蜘蛛とか怒らせたらめっちゃ大変な事になりそうだし。最悪、ユアンを殺してあげるとか言われかねん。


 あーっ、ったくもうなんでこーなるかなー。確かに前の分かれ際『またね』とか言われたけどさー。

 あーやだやだ。早くユアンとお兄様とエリアスに会いたいな。この『神の間』、真っ白で気がおかしくなりそうだし。

 そもそも、昔の自分と向き合う、ってシリアスっぽいじゃん。シリアス嫌い、大嫌い、苦手苦手やりたくない。


 まあそいうわけで、今私はセプスの部屋に来ていた。

 

「じ、じゃあ神楽、話そう」

「うん」


 セプスはかなり楽しい人だから好きなんだけどねー。なにより緊張してどもるところが可愛いし。

 セプスのところは一番殺風景だった。真っ白な空間に真っ白な時空、空さえも白くて明るい。その明るさがまた真っ白で――気がおかしくなるよね!こういうのって精神的にキツい……!


 私が放心した様子で周りを見ていると、セプスは上に青い空、白い雲、地面は草原にして、丁寧に白に赤いチェックが入ったカップに、青色の椅子、緑色のテーブルクロスと青色の花が描かれたお皿に乗ったクッキーを用意してくれた。うっわー、すげー……。

 何回見ても飽きないわあ……。

 さすが神様と言うかさすがセプスと言うか。

 セプスは『創造』を得意とした神様だったっけか。さっすがー。

 

 椅子を勧めてくれたので、座る。セプスは向かいに座っていて、私を見て照れ臭そうに笑った。

 ……可愛い。


「最近、あっちはどうだ?楽しいか?」

「うん、すごく楽しいよ。お兄様も優しいし、コナー君っていう癒しも居るし」

「そうか、癒しもあって良かったな。けど、あの庭師を仲間に引き入れるとは思わなかったぞ。あれは『隔離者』だからな、心苦しかったが……『隔離者』について前説明したのは憶えているか?」


 やっば、憶えてない。ここの人達の事は完璧に憶えてるんだけど、会話した内容はまったく覚えてない。なんでだ?

 目線を泳がせていると、セプスはふっと笑った。


「魔族・人族・魔物・魔獣……あっちで生まれるすべてのものは、生きているだけで大地の魔力を吸収しつつ生きている。そんな世の中のクールダウンのために生まれてくるのが『隔離者』だと話した。だから感謝のしるしとして、『隔離者』には一定の良い環境を与えている、と」

「……そうだったっけ?だったらコナー君って」

「間違い、だな。あればかりは創造担当の私のミスだ――申し訳ない」


 セプスが頭を下げる。それを受けて、私は考えていた。

 ミス。それでコナー君は不幸になった?いや、不幸かどうかはコナー君次第だ。コナー君が今の暮らしを幸せと思っているのなら、別に、セプスが頭を下げる必要はない。


「私に対して、謝らないで。謝るなら、コナー君がここへ来たとき、誠心誠意頭を下げなさい」


 私の答えに、セプスは頭を上げて苦く笑った。え、間違った?


「これは、前にもやったんだが」

「え、そうなの!?」

「ああ。その時お前は、『私に謝る事で罪悪感を軽くしようとしないで。鬱陶しい』って言ってたな」

「うわあああああごめん……」

「いいさ」


 すっごい事言ってんな愛発……まあ愛発だけじゃなく『愛発神楽』がそう言ったのか。ややこしっ!私名前と肩書き多すぎじゃね!?

 そんな事を考えていると、次々にセプスが質問してきた。


「あれは楽しそうにしているか?」

「コナー君の事?どうだろう、前に一緒に居てくれるって言ってたな。嬉しかったー」

「そうか。あれはどういう毎日を過ごしてるのか、知ってるか?」

「えっと、普段は知らないけど地民の日は一緒にお茶会してるよ。いろいろ話して、楽しいんだ」

「最近、訓練はどうだ?ニフテリザに聞くと、どうやら操作魔法を習っているそうじゃないか。私の専門分野だ。嬉しく思う」

「滅茶苦茶楽しい。セプスってこんな気分なんだね。あ、でもセプスは天性の神様だから勉強はしてないのか」

「いや、最初は色を調整するのに苦労したぞ。微妙に違う色の組み合わせでたくさんの種類が出来るというのは楽しいものでな」

「あ、それ分かる!」


 という、なんとも神様との会話とは思えない会話が続き、セプスはふっと息を吐いた。幸せそうな、切ないような、そんな表情。

 ……やな予感。


「もうすぐ時間だ。楽しかったぞ。次会うのは、見送りの時か。その後、いつごろ会えるのだろう」


 キター!私の苦手な別れ際、キターッ!


「さあ、いつだろね」

「ここから出る時、ここで話した記憶は消えるのか」

「どうだろう?後で万智鶴さんに聞いてみるよ」

「ああ、頼む。……最後に一つだけ、質問してもいいか」

「?なに、いいよいいよ。じゃんじゃん言って」


 シリアス苦手だとか言ってらんないなと察した私は、にっこり笑ってそう言った。セプスはすーっと息を吸うと、質問を投げかける。


「神楽、お前、本当は私が嫌いだろう」


閲覧ありがとうございます。

セプスはコナー君の創造主です。『隔離者』は普通、かなり優遇されるハズですが、コナー君はセプスのミスでエルフに生まれたわけです。

次回、ニフテリザと話します。

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