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92 嫉妬深い

 アイルズに教えてもらう日。

 私は予想以上に早起きしてしまい、衣装室に行って服を選んでいた。


 何がいっかなー。出来る限り軽装で行きたいところだけど、それだと示しがつかないかな?なるべく肌は露出したくないし……。

 悩んだ末、黒い服に赤いリボンタイ、ローブの格好で行く事にした。いかにも魔法使いって感じの。

 うん、可愛い(服が)。

 でもわたしはもっとスッとした格好の方が好きだなー。若干、暑いし。

 まあ半袖半ズボンだとユアンもお兄様も怒りそうだから、これくらいがちょうどいいか。ローブ脱いだら半袖だし、ちょうどいいんじゃない?

 鏡の前でくるりと回ってから、軽く風魔法を使ってみる。


 ……やっぱり精密さが足りないな。魔力概念を憶えたらちょっとは使いやすくなるのかな。

 魔力概念を憶えた人は魔法を極めるって言われてるけど、途中で挫折してしまう人がほとんどらしい。難しいし、憶えた後にも使えなければ意味ないからやりたい人居ないんだろうねー。


 コンコン


「ミルヴィア様?」

「はあい。今行きます」


 リボンタイを整えてから、外に出る。早朝と言う事もあってか、今はこの格好がピッタリだ。

 ユアンは部屋から出て来た私を見て、目を細めた。


「ミルヴィア様、いつもと格好が違いますね」

「ったり前じゃん、アイルズんとこ行くんでしょ?」

「……ええ」

「宮廷なんてきちんとしていかないとって気がするよ」

「ええ、そうですけれど。最近背伸びましたよね?」

「おー、そうかな?」

「もうちょっとで六歳ですしね」

「そうだねー、て、は!?私もうちょっとで六歳なの!?」

「ええ、一か月後だったかと。八歳になるまで大がかりなパーティーは行われないとは思いますが」


 確かに、今五歳って言われただけで、いつ六歳になるとかは言われてなかったか……。

 でも、マジかー。それなら背ぇ伸びてくるのも納得だわ。


「えーと、今は」

「六時半です。早起きですね」

「そう?まあね、楽しみだから」

「アイルズ様と会うのが、ですか?」

「操作魔法を習うのが、ね」


 いちいち突っ掛ってこないでほしい。

 妬み過ぎでしょ。剣の訓練はよくやってたじゃん。あ、そう言えば、アイルズにはほぼ一日おきに授業してもらうつもりだから――


「しばらく剣はお休みだね」

「え?」

「ビサにも言っとかなきゃね。今日操作魔法っていうのは言ってあるけど、うーん、しばらくはビサとも会えなくなるね」

「……」

「あー、まあ、ユアンは私がアイルズと勉強してる間鍛えてていいよ。終わった時呼ぶから」

「はい」


 ユアンが沈んだような声で言った。

 何そんな落ち込んでんの?引っ付き虫止めろって言ってるわけじゃないし……いや、ホントは言いたいけど。

 私達は三百四号室に行って、ちょっとだけ予習して行く事にした。


 分からないところがあっても全然構わないけど、分からないところはハッキリさせたいからね。

 にしてもやっぱり魔力概念は難しいな。魔女文字で書かれてる部分が多いってのもあると思うけど、なんていうか論文っぽくて。

 それでもファンタジーな事だから憶えるのには抵抗がないけど。

 うーむ、魔力と物質の在り方は魔力概念を一通り勉強してから、になるのか。

 操作魔法が使えるようになるのはまだまだ先だね。


「……念入りですね。アイルズ様の授業がそんなに楽しみですか?」

「だーかーらー、操作魔法の授業が楽しみなの!もう、勉強中なんだから喋るなって」


 適当にあしらってから、ページをめくる。

 うーん、これ全部アイルズは憶えてるのか。それどころか応用して、術同士を組み合わせた合体魔法さえ可能って事だよね?

 椅子は木・布・綿って結構作るのが難しい素材が多いし。木は簡単らしいけど。


 ええっと、魔力が縦に3、動いたとしたらその途中で撒かれる魔力は総量の十八分の一になり……。

 あーもう難しい、っていうかそれ自体は難しくないんだけどその理由がわけわかんない。

 なにさ軌道に置かれる魔力は元の魔力とは合体し得ず、空気中に留まり空気の魔力と変換されるって。しかも変換されたら元の魔力より量は増えるって、その原理何よ!?


「ミルヴィア様、そろそろでは」


 私がうんうんうなっていると、ユアンが声を掛けてきた。時計を見てみると、なんとびっくり、もう九時過ぎだった。

 約束の時間は特に決めてない。けどお兄様の話だとアイルズは今日はお休みらしいから、早めに行っても大丈夫でしょ。

 

 道中、ユアンがねちねちうるさかった。


「何かあったらすぐ言いますよう」


「何かされればすぐに大声を上げるんですよ」


「抵抗して短剣で首を刎ねても構いません」


「やりたくなければ私が代わりに首を刎ねます」


 とかなんとか。

 うるさいったらありゃしない。過保護なんだよなあ。もっと信用してくれてもいいのに。

 私はアイルズを信頼してるし、ユアンも信頼してるのに、あっちからの信頼は薄い気がしてならないんだよねー。

 どっちかって言うと、アイルズに対する信頼がゼロなのか。もう、アイルズももっと素行を良くしてもらわないとこっちが困るよ。いちいちお兄様もユアンもうるさいだろうしさーあ。

 案外何もしないってのがあるかもしれないじゃん。ユアンもこの前結局何もしなかったし。


 ユアンとアイルズを一緒にしちゃいけないんだろうけど、同じくらい最大レベルで信じてるからなー。


 宮廷に着くと、門番ににこりと笑いかけただけで開けてもらえた。ラッキ♪

 執務室に行って、扉を叩く。アイルズがカチャリと扉を開けて、恭しく一礼した。また、あのモノクルを掛けてる。銀髪が靡いて綺麗だった。

 ていうか、世界的には銀髪って珍しいはずなのに、私の周りに三人居るんですけど。


 アイルズ、狐ちゃん、レーヴィ。


「お待ちしておりました魔王様。向こうの部屋に準備してあります」

「ああ、ありがとう。ユアン、待っててね」

「……仰せのままに。アイルズ様、ミルヴィア様に何かしたら」

「さあ、どうなるのですか?魔王様の意に反し、私を処刑しますか?」

「っ!」

「ユアン、待ってて」


 一言、ぴしゃりと言うと、私はアイルズと一緒に三、四部屋向こうの部屋に行った。

 そこはかなり準備が整った部屋だった。


 広い机が置いてあり、そこにノートと羽ペン、インク、操作魔法の専門書や入門書、教壇には問題集のような物がいくつか。さすがに黒板はないけど。

 すげー……。


「ちなみに問題集は私が書きました」

「おお」


 こうして、私達の最初の授業が始まった。

閲覧ありがとうございます。

アイルズはかなりの操作魔法熟練者です。精密な魔法が操作魔法向きなんですね。

次回、授業が始まります。

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