異世界攻略 タスさんの場合
この短編は会話のみです。
「やぁ、タスさん。」
「はて、家にいたと思ったのですが……変なところにきてしまいましたね」
「驚かないんだね」
「異世界招待の話はニュースでやってますし、驚いたところで状況は変わりませんしね。ところであなたのお名前は神様でよろしいでしょうか。」
「神様でもいいけど僕はダタって言ってね。今回は君を招待したんだ」
「それで、しがない中間管理職になんのごようで」
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「はぁ、タス動画に興味をもって、それを異世界でやってみないかと」
「うん、どうだろうか」
「ちなみに、帰ることは」
「できるよ、これは受けたときも帰ることはできるよ、ただし受けた場合はちゃんとクリアしないといけませんからね」
「……ふむ、どうしましょうかね」
「なにか問題でも」
「いえ、私はただのうだつが上がらない中間管理職のサラリーマンでしてね。周囲の人たちもこの年になってもゲームやってること馬鹿にされてるわけで」
「なにが言いたいの」
「私の顔とか姿とかは変えられませんかねぇ」
「それくらいなら簡単にできるよ」
「では」
「受けてくれるの」
「まぁ、私でよければ。その前にレギュレーションを決めないといけませんねぇ。」
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「では、これで一応いきましょうか。」
「一応って事は改変されることもあるの。」
「まぁ最初のルールはあまり変わりませんが、不満点や新たな手法とかが生まれたら変わりますよ。」
「じゃあ、今のところは目標を討伐すること。総合評価は時間と最初のポイント、討伐する目標のポイント及び自分と討伐する生物の差額ってことでいいね」
「まぁそれくらいあれば十分に下地ができていると思います」
「それで、今回は何を討伐するの」
「今回は、まぁ最初ということでありふれたファンタジーのありふれた魔王の討伐でいきましょうか」
「普通にやったら数年とかかかるよ、それ」
「まぁ、最初ですしね」
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「ねぇ」
「なんでしょうか」
「異世界にいく、キャラクターの姿形が君のままなんだけど」
「私はこの部屋に残りますから」
「じゃあ誰が魔王討伐にいくのさ」
「魔力で私が操れるキャラクターを作り討伐させます。これならキャラクターが死んだ場合私が再度召喚しなおせば復帰できますよね」
「なかなか、えぐいこと考えるね」
「これでも、部下を抱えている大人ですから。汚いこともきれいなこともわかってますよ。」
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「タスさんが召喚されましたね。」
「そうですね。」
「時間停止とか使わないの。」
「王との謁見はイベントですからね。ムービーと同じように聞いていましょう。」
「でも暇なんじゃないの。」
「普通ならそうですが、今回は未来予知もってきましたからね。この間に早いルートでも見ときましょうか。」
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「量が膨大すぎて時間を止めちゃったね」
「次走るときの修正点ですね。やはり最初は粗が目立つものです」
「それよりも僕は本当に一時間で魔王が倒せたのが驚きだよ。ちゃんと捻って作ったのに」
「まぁタスさんですから。」
「ところで、金髪の幼い女性にしたのは何か意味あるの。」
「まぁ様式美ですよ。通例といったほうがいいですかね。女性は金髪の幼い子、男性は40代の男性って感じです」
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「さて、王との謁見も終わりましたし、とりあえず通行手形と金になるものと錬金セットを頂きましょうか」
「錬金セットないとボス倒せないしね」
「まぁそういう世界を選びましたから」
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「町からでようとすると王女様が追ってくるね。」
「王女様が見えたら乱数調整して転移ですね。見えない場合は何故か部屋に居ましたから」
「ここは強制のイベントにしたからねぇ。それの弊害が生まれちゃったかな」
「まぁお互い次回から頑張りましょう」
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「王女の部屋に着いたね」
「ネックレスが必要ですからね。錬金で作れたら用がなかったのですが」
「さすがに重要アイテムは作らせないよ
「そのわりには、ボス(魔王)にダメージ入る重要アイテムは錬金できるですげねぇ……まぁ先に行きましょうか」
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「さて、鍛冶の町に着いたね。本来は色々な設定があるけど」
「タスさんには意味ないですしね」
「うぅ、製作者としては新たな発見があって嬉しいようであり、意味のないイベントが多すぎると悲しいようでもある」
「まぁ通行手形で入りましょう。スピードランですから。」
「転移で入ろうとするとイベントが発生して牢屋いきだからね。無駄なイベントいれすぎたかなぁ」
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「王国の手形見せたら、買いたいものも全て買えたね。」
「まぁ、支払いは王国でやってくれますからね、信用してくれますよ。危ないものも買えますし。手形はもう要らないので、守衛にでも渡していきましょう。」
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「未来予知でも見たけど、意味不明だよねそれ。守衛さんも口パクパクさせてるし」
「タス動画では普通ですよ。垂直に転移させて加速度増やす光景は」
「そのための重量武器なの」
「まぁこれが竜殺し(ドラゴンスレイヤー)って名前があったのも理由ですかね、好きなんですよこういう装備。いかにもファンタジーしてるって感じがして」
「ただの重たい鉄塊だけどね、それ」
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「一撃で倒せたね、次回は対策が必要かなこれ」
「まだまだ変わりはいっぱいいましたから。やるなら根本から変えないと駄目ですね。まぁそうなったら選びませんが」
「製作者泣かせだね、本当に」
「はは、ほめ言葉と受け取っておきますよ。」
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「うぅ、いまだに信じられない。なんで大成功ならともかく、大失敗でボスの弱点である光玉ができるんだ」
「まぁタス動画あるあるですね。正確にはどじっこていうスキルを錬金で発動させることにより重要アイテム以外は全部錬金できるのが原因ですね」
「なんで光玉は重要アイテムじゃないんだよ」
「なくても理論上は勝てるように作りましたよね」
「そりゃあ一つとり忘れただけで勝てない設定なんかにしたらまずそのアイテム壊しにいくしね。案外、難易度の塩梅が難しいね」
「ですから私は製作者様には感謝してますよ。このようなゲームを作っていただきありがとうございますとね」
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「さて、ボスのいるばしょを開く場所にきましたね」
「本来は、転移とかはできないからかなり時間がかかるんだけどね。封印もされてるから、解除もしなくちゃいけないし」
「まぁ、指定からはいけないのであって、中にバリアとか封印とかされてない場合はランダム転移でいけるんですよねこうゆう場所って。」
「それで、即使うの。それ使うと魔王復活して世界が大混乱するんだけど」
「まぁタスなので、準備ができたら即やりましょうか」
「魔王が可愛そうになって来るね本当に」
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「難所にきたね」
「えぇ、攻略で一番難しい場所ですね」
「失敗作の錬金をボスにあて、さらに加速した攻撃を当てる」
「さらにネックレスで封印をとくのも平行してやらないといけませんからね、タス動画製作者としては腕の見せ所です」
「やってることは、スロー再生と失敗した際の巻き戻しなんだけどね」
「それは言わないお約束です」
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「ぎゃぁぁぁああぁ。」
「魔王との戦い十分持たなかったね」
「バリアを謎の液体で壊して、間髪いれずに竜殺しで一刀両断ですからね」
「それで第二形態に移ってる最中に光玉連打で形態変化できずに倒されちゃったと。……感動も全くないね」
「まぁ冒険とかしてませんしね、思い出もないですし。さて空から光がでてきて後数分たったらクリアですね」
「その心は」
「タス動画はボタンを押さなくなったら終了ですので、とりあえず今回はボス討伐から数分後の神様からここに残るかそれとも帰るかの選択肢がでるので、それを選択したら終了ですね」
「ちなみに選択肢は」
「帰る一択です」
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「さて完走した感想ですが」
「うん」
「だじゃれなんでもう少し反応が欲しかったですね。……さて感想ですが錬金が強すぎでしたね、後変身中は無敵とかにしたほうがいいですね、多分普通に戦っても聖剣とかあれば倒せちゃいますよ第二形態になる前に」
「反省点が多かったね」
「何度も言うように次回から頑張りましょう」
「そういえば報酬は何にする。世界をクリアしたら報酬渡すことになってるんだけど」
「そうですね、面白かったですし。私や他のタス製作者も呼んでスピードランしたいですね、あとそれと……」
「了解。それじゃあまたいつか。君が生きてるうちにまた呼ぶから。そういえば君の名前は」
「名前は名乗れないので、動画の制作時の名前でお願いします。私の名前は……」
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「ねぇ、あれ見た」
「見た見た、『異世界タス多分これが一番はやいと思います』でしょ、動画制作者がダタっていう異世界の神様でプレイヤーがファンシーのやつでしょ」
「おまけにファンシーの願いが異世界スピードランの普及だから、タス制作者の国からの支援が始まるみたいだね」
「そしたらうちの会社も支援に入るのかな」
「なんで、うちの会社にそんな制作者なんていたっけ」
「たしか係長が制作者じゃなかったけ」
「こらこら、仕事中ですよ。私語はいいですがちゃんと手も動かしてください」
「はーい、わかりましたーところで係長、係長はタス動画制作してるんですか」
「まぁ趣味で少々、そっちでは少しは有名でとは思いますけどね。それよりもゲームは幼稚と笑っていたのに随分と変わりましたね」
「だって、国からの支援やもしかしたら巻き込まれて異世界に行けちゃうかもしれないんですよ」
「はぁ、夢見るのはいいですが仕事はちゃんと終わらせて帰ってくださいね。毎回進捗を報告するときびくびくしてるんですから」
「大丈夫ですって、今回はうまくいってますから」
「そのままの調子でお願いしますよ。ところで二つ案件があったはずですがもう片方の進捗はどうなのですか」
「あっ、あれはえーと……、そのー」
「はぁ、資料を渡してください。少しやっておきますので」
「わーい。ありがとうございます」
「あくまでも少しやるだけですので、さっさと案件終わらせてこっちに移ってくださいね」
「はーい」
「……やれやれ、手のかかるこだちだ。さてと私も仕事しますか」
「そういえば、係長。そのネックレスどうしたんですか。」
「あぁ、このネックレスですか。友達にもらったんですよ。記念にとね。」
興味を持ってくれたのなら、同様に神隠しにあった。生還者 とある大学生の場合の方もよろしくお願いします。