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天の梯子
『天の梯子』
毎日彼から送られてくる写真が、病室を出ることの出来ない私の中で四季を刻む。
一所に居ながら、私は、
敷き詰められた白い雪が、月の光を夜に返すのをみた
舞い落ちる花たちが春の空気をほどくのをみた
夏陰に蝉時雨が染みるのをみた
秋の葉が、命を燃やすのをみた。
とある雨の日の翌日、彼から届いた新しい写真に、私は息をのんだ。
薄暗い雲の切れ間から、少し揺らぎ、粒になって散りながら、それでも真っ直ぐと、光の筋が差していた。
「雨上がりに、偶然見つけました。天の梯子と言うそうです。」
写真の裏に書かれた無邪気な文字を、指でなぞって慈しむ。
「縁起が悪いのよ、馬鹿」
自然と罵声がこぼれた。愛おしすぎて涙が出た。
素直で、愚かで、一途な可愛い人。
生きたい、と思った。彼と一緒に生きる未来が欲しいと、強く強く、私は思った。
『天の梯子』終わり