表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧作2-2  作者: 智枝 理子
Ⅲ.王子と姫
20/40

04 王国暦五九九年 ポアソン 二日

 今日から新入生が入学準備で養成所に入るから、授業は午前で終わりだ。

「カミーユ。ちょっと来なさい」

「今日は用事があるんだよ」

 ロニーと約束がある。

「じゃあ、用事が終わったら付き合って」

 しばらく剣の稽古もやっていないから、グリフレッドに稽古も頼んでるのだ。

 今日は忙しい。

「遅くなる。明日にしてくれ」

「王子役はあなたしか居ないのよ。誰に稽古を頼めば良いの」

「今日やっても明日やっても一緒だろ?」

「もう一回ちゃんとやりたいの。お願い」

「今日は無理だって言ってるだろ」

「酷い…」

 えっ。

「ちょ、ちょっと待てよ」

 今の、俺が悪いのか?

「マリー?なんで泣いてるの?」

「おい、カミーユ。マリーに何したんだよ」

「待てよ、俺はただ」

「マリー、大丈夫?」

「酷いことでも言われたの?」

 なんで一方的に俺が悪いことになってるんだよ。

「謝れよ、カミーユ」

 いい加減。

 うんざりだ。

「稽古なんて俺が居なくたってできるだろ。だいたい、劇が失敗するか成功するかはマリーにかかってるんだぞ。俺なんてサンドリヨンを引き立てるわき役でしか…」

 マリーが、大声で泣き出す。

 そして、走って出て行った。

「待って、マリー」

 それをアシューが追う。

「カミーユ。言い過ぎよ」

「なんだよ」

「マリー、ずっと練習してるのよ。一幕と四幕で舞台に立つのはマリーだけ。マリーが失敗したら、劇は止まる。サンドリヨンが劇の要だってことは、マリーが一番良く知ってるわ」

「これ以上、マリーにプレッシャーかけるようなこと言ってどうするのよ」

「そんなこと言ったって…」

 俺にどうしろって言うんだよ。

「ねぇ。こんなんで、劇なんてできるの?」

 不安そうに、皆が顔を見合わせる。


 ※


「マリーと喧嘩したんだってな」

「カミーユが泣かせたんだろ?」

 第一声がそれかよ。

 なんで、あの場に居なかったくせに、エルもシャルロも知ってるんだよ。

 シャルロに呼び出されたから、きっとその話しだとは思ってたけど。

「今日は忙しいって言ってるのに、マリーが稽古をしようって言って来たんだよ。断ったら泣いただけだ」

「俺が知ってるのと違う」

「なんて聞いたんだよ」

「カミーユがマリーに失敗は許さないって言ったって」

「はぁ?」

 誰が言ったんだ、それ。

「俺がそんなこと言うわけないだろ」

「じゃあ、何て言ったんだ?」

「…誤解だ」

「悪いと思ってるなら謝ればいいだろ」

「謝るよ、明日」

 今日は会わなかったから。

「話しはそれだけか。もう寝る。じゃあな」

 シャルロの部屋を出る。

 どうせ明日になれば、マリーだって元気になるだろう。

 すぐに謝れば良いんだ。


 …でも。

 本番当日まで謝るタイミングはなかった。

 意図的に避けられてるのは明らかだったけど。

 どうすんだよ。

 稽古も一緒にやらないなんて。

 俺が悪いのか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ