04 王国暦五九九年 ポアソン 二日
今日から新入生が入学準備で養成所に入るから、授業は午前で終わりだ。
「カミーユ。ちょっと来なさい」
「今日は用事があるんだよ」
ロニーと約束がある。
「じゃあ、用事が終わったら付き合って」
しばらく剣の稽古もやっていないから、グリフレッドに稽古も頼んでるのだ。
今日は忙しい。
「遅くなる。明日にしてくれ」
「王子役はあなたしか居ないのよ。誰に稽古を頼めば良いの」
「今日やっても明日やっても一緒だろ?」
「もう一回ちゃんとやりたいの。お願い」
「今日は無理だって言ってるだろ」
「酷い…」
えっ。
「ちょ、ちょっと待てよ」
今の、俺が悪いのか?
「マリー?なんで泣いてるの?」
「おい、カミーユ。マリーに何したんだよ」
「待てよ、俺はただ」
「マリー、大丈夫?」
「酷いことでも言われたの?」
なんで一方的に俺が悪いことになってるんだよ。
「謝れよ、カミーユ」
いい加減。
うんざりだ。
「稽古なんて俺が居なくたってできるだろ。だいたい、劇が失敗するか成功するかはマリーにかかってるんだぞ。俺なんてサンドリヨンを引き立てるわき役でしか…」
マリーが、大声で泣き出す。
そして、走って出て行った。
「待って、マリー」
それをアシューが追う。
「カミーユ。言い過ぎよ」
「なんだよ」
「マリー、ずっと練習してるのよ。一幕と四幕で舞台に立つのはマリーだけ。マリーが失敗したら、劇は止まる。サンドリヨンが劇の要だってことは、マリーが一番良く知ってるわ」
「これ以上、マリーにプレッシャーかけるようなこと言ってどうするのよ」
「そんなこと言ったって…」
俺にどうしろって言うんだよ。
「ねぇ。こんなんで、劇なんてできるの?」
不安そうに、皆が顔を見合わせる。
※
「マリーと喧嘩したんだってな」
「カミーユが泣かせたんだろ?」
第一声がそれかよ。
なんで、あの場に居なかったくせに、エルもシャルロも知ってるんだよ。
シャルロに呼び出されたから、きっとその話しだとは思ってたけど。
「今日は忙しいって言ってるのに、マリーが稽古をしようって言って来たんだよ。断ったら泣いただけだ」
「俺が知ってるのと違う」
「なんて聞いたんだよ」
「カミーユがマリーに失敗は許さないって言ったって」
「はぁ?」
誰が言ったんだ、それ。
「俺がそんなこと言うわけないだろ」
「じゃあ、何て言ったんだ?」
「…誤解だ」
「悪いと思ってるなら謝ればいいだろ」
「謝るよ、明日」
今日は会わなかったから。
「話しはそれだけか。もう寝る。じゃあな」
シャルロの部屋を出る。
どうせ明日になれば、マリーだって元気になるだろう。
すぐに謝れば良いんだ。
…でも。
本番当日まで謝るタイミングはなかった。
意図的に避けられてるのは明らかだったけど。
どうすんだよ。
稽古も一緒にやらないなんて。
俺が悪いのか?




