表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旧作2-2  作者: 智枝 理子
Ⅱ.錬金術師と蜜の薬
12/40

02 王国暦五九八年 リヨン 二十八日

「お、良い動きだな」

 くそっ。

 後、もう少しなのに。

 右…、違う、左だ!

「!」

 兄貴の剣が、俺の左手に反る。

 すかさず胴体に向かって突き刺すと兄貴が倒れた。

 倒れた?

「や…、やった!」

 初めて、兄貴から一本取った!

「とうとう、やられたな」

 兄貴に手を差し伸べると、その手を取って、兄貴が立ち上がる。

「今の、本気の勝負だよな?」

「当然だ。純粋に俺の負けだよ」

「やったー!」

 ちゃんと、毎日鍛錬をしていた甲斐があった。

「おめでとう、カミーユ兄さん」

「マリユス」

 振り返ると、弟のマリユスが駆けてくる。

「久しぶりだな」

「お久しぶりです」

「なんだよ、敬語なんて使うなよ」

 マリユスは、エグドラ家の本家で修行中だ。

 年末年始、家族で過ごすために王都に来たのだ。

 養成所に入るまでは俺も兄貴も本家に居たが、兄貴は従騎士を目指す準備の為、俺は養成所に入る為に、今年のヴェルソから王都に居るのだ。

 養成所は春入学。ポアソンにスタートだったから。

「兄さんこそ、養成所の人は貴族ばかりだから、敬語に慣れたかと思ったのに」

「そんなことないぜ。敬語使ってる奴なんかちっとも居ない」

「そうなの?せっかく、敬語の練習してきたのに」

「マリユスも養成所に入りたいのか」

「カミーユ兄さんと遊べないの、つまらないから」

「遊びに行くところじゃないぜ。死ぬほど勉強させられるんだから」

「カミーユなんて、いつも愚痴ばかりだぞ」

「だから、誰にも挨拶せずにクロフト兄さんと稽古ばかりしてるの?」

 そういえば、家に帰ってすぐ兄貴に会ったから、真っ直ぐ訓練場に来たんだっけ。


 養成所は今日の午後から年末年始の休暇に入った。

 ヴィエルジュの朔日まで休みだ。

 二日は、午後にホームルームがあるだけで授業がないから、二日もほとんど休みみたいなものだけど。


「三人揃うのは久しぶりだな」

「そうだな。マリユス、俺と勝負しようぜ」

「愛剣を忘れて来たのに…」

「忘れて来た?」

「間違えて、演習用のを持って来ちゃったんだ」

「それなら、武器庫で選んで来ようぜ。俺もそろそろ、もう少し重い剣に変えようと思ってたところだ」

「こら。ちゃんと父上に許可を取らないとダメだろ。カミーユは挨拶だって済ませてないじゃないか」

「え?親父、家に居るのか?」

 親父は陛下の近衛騎士だ。だから、家に居るなんてこと、滅多にない。

「居るよ。年末年始は城で陛下の守りにつくが、今日とヴィエルジュの朔日は休暇を取っている」

「じゃあ、三人で押しかけるとするか」

「うん」

 親父のことだから。

 新しい剣を選んだら、訓練場に戻って稽古をつけてくれるだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ