00 プロローグ
自分の妄想を文章にすることの難しさに四苦八苦しています。
自己満足で始めたものを、暇つぶしにでも読んでくださる方がいたのなら感謝感謝。
第一章あらすじ
大国マダリアに訪れた一人の人物。物語はここから動き出す。
英主と名高い国王ユリウスに会いたいと現れたのは黒衣に身を覆った謎の人物だった。
年齢不詳、性別不明、容姿判別つかず、動機も不明。分厚すぎる謎のベールを纏いながら、一国の王との対面を願う不審者に、一人の男が興味を示した。
その男は言った。
「武闘大会で優勝して王騎士の眼鏡にかなったら、御前試合で陛下に会える」
王に会いたいと願う人物の正体は?
そして、協力を申し出た男の狙いとは?
――貴方は王だわ
娘は言った。
碧玉を宿した鮮やかな双眸が哀しいほど透き通り、彼の胸を狂おしいほどに締めつける。
『血で決まるものではなく、まして他と競い合い騙し合い奪い合うものでもなく。
何者にも侵されない、天から与えられる絶対的な称号として、王という存在があったのだとしたのなら――。
貴方は王だわ。きっと一番王にふさわしい』
男は戯言だと笑った。
だが、娘は高らかに告げる。
『予言してさしあげましょう、ユリウス。
貴方はきっと偉大な王になる。
伝説の勇者と同じように、輝かしい功績と名声、民衆からの愛と信望を得て、歴史の中に嶄然と名を残すような、王の中の王に――』
†††
青い空に真っ白な雲が浮かんでいる。
空は高く広い。
青と白の色彩の下に広がる緑の田園風景は、この世のどこにも不幸の種など落ちていないと、平和を謳歌しているようだった。
のどかで退屈と言ってしまえばそれまでだ。だが――
小川を流れる水のせせらぎ、
遠くでさえずる野鳥の歌声、
春の匂いを運ぶ風の肌ざわり、
太陽の光で彩りを変える自然界の色相、
そのどれもが優しく穏やかでこの上もなく好ましかった。
空気は澄んでおいしい。
陽光は身を包むように暖かく、故郷のそれよりずっと身近に感じられた。
「ここが、マダリア……」
五官で体感するその幸福の世界に、ほんの一時だけその身を預けることの是非を、祈るように願った。
さながら許しを請うように。
どうか今だけは自分を拒まないで欲しい、と。
背後に聳えるゴンドカ高山の雲峰を振り返って、ぎゅっと拳を握り締めると、また前方に向き直り、その者は一歩を踏み出した。
ピネレー山脈麓に広がるアストラハンの大地に抱かれた王国、マダリア。
希代の英主と称えられる二十七代目国王の座す、その王都アレスを見据えて。
嶄然【ざんぜん】…一段高く抜きん出ている様。