表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

初めて流れ星を見たんだ

作者: P4rn0s

夜は思ったよりも静かだった。

遠くで車が通る音と、どこかの家の換気扇の低い唸り声だけが、世界がまだ動いている証みたいに残っていた。


産まれて始めて、流れ星を見た。

テレビや写真で何度も見てきたはずなのに、実物は驚くほどあっけなかった。

空に傷がついたみたいに一瞬だけ光って、次の瞬間にはもう無かった。


願い事なんてしている暇は無かった。

「願い事を三回唱えないと」とか、「心の中で強く思え」とか、そういう知識だけが遅れて頭に浮かんで、肝心の言葉は何ひとつ出てこなかった。

ただ、見てしまった、という事実だけが胸に残った。


少しだけ悔しくて、でも不思議と後悔はしなかった。

その理由を考えて、しばらく空を見上げたまま立ち尽くした。


きっと、流れ星を見てすぐ言える願いって、本当に自分が望んでいるものなんだ。

迷わず、言葉を選ばず、条件も付けずに口をついて出る願い。

そういうものだけが、叶えられる資格を持っているんだと思った。


欲しいはずのものはたくさんあるのに、いざとなると何も言えない。

それはつまり、自分が何を望んでいるのか、ちゃんと分かっていないということだ。

流れ星は、それを確かめるための試験みたいなものなのかもしれない。


星が消えたあとの空は、何事も無かったかのように暗く、静かだった。

でも、さっきまでとは少しだけ違って見えた。

次にもし流れ星を見たら、今度はきっと言えるだろうか。

何のためらいもなく、胸の奥からそのまま出てくる言葉を。


そう考えながら、もう一度だけ空を見上げてから、家に帰った。

願いはまだ形になっていない。

けれど、確かにそこにある気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ