飯食い機のムスメ
ウチの母は飯食い機である。
ものの例えでも誇張でもない、本当に飯食い機なのである。
飯食い機は、朝、メシを食うために起き、朝飯を食う。
昼飯まではウトウトしているか、ぼんやりしている。
夕飯までも同様。
夕飯を食うと、寝ていることが多い。
私が思うに、メシを食わない時間は、飯食い機が電源を切っているか、スリープ状態になっていると思っている。
いつから、こうなったのだろうか。
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はじめは人間だった……いや、人間だったと思っていた。
人間の母だと思っていたが、気付いたら、いつの間にか飯食い機になっていた。
……どういうことだ?
人間か、人間になりすました何かなのか、飯食い機なのか。
というか、なんなのだ、飯食い機とは。
メシを食う機械?
そんなものが存在するとでもいうのか。
そんなはずがない。
そもそも、メシを食うだけの機械など、何のために作られたのか。
食料が無駄になるだけではないか。
しかも、飯食い機がウチの母とは、どういうことだ?
メシを食う機械とは、一体何なのだろうか。
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私は、ウチの母のことは、食事がいる地蔵ではないかと思っていた。
これも、いつからか判明しない。
気付いたら、そう認識していた。
おそらく、食事をする以外、殆ど動かないので、地蔵だと認識したのだろう。
よく考えたら、動かないものは地蔵以外にもあるのに、何故地蔵だと思ったのかは、今となっては全くわからない。
ただ、地蔵だと認識していた。
しかし、ある日、父が言ったのだ。
あれは『飯食い機』だと。
父は飯食い機を知っていたのか?
いつから飯食い機だと認識していたのか?
そして、何故?
何故、飯食い機のことを知っているのか?
疑問だらけだ。
そもそも、あれは秘密ではなかったのか?
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あれとは何だろう。
年を取ると忘れっぽくなって困る。
先日など、『玉ねぎ』が出てこなかった……いや、玉ねぎだけではなく、人参もジャガイモも出てこなかった。
まな板を『なまいた』と間違えて覚えていたこともあった。
故障だろうか。
…………故障?
誰が……いや、何が?
忘れっぽくなったのは、故障なのか?
いや、そもそも人間の私が故障など、あるはずがない。
本当に人間か?
ちょっと自信がなくなってきたので、鏡でも見ようと思う。
記憶にある人間のワタシが映っていれば、ワタシハ人間であって、故障などするハズがナイ。
鏡を見たら、ソコには地蔵がいた。
何故、地蔵が?
今、ウチには私しかいないのに。
その鏡には、ワタシが映っているハズなのに。
ドウシテ……?
ワタシハ、いつカラ、地蔵だっタのカ……?
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…………アァ、秘密ダッタ。
ワタシガ、いや、ワタシ達の本当のコトは。
ハハはメシを食う機械。
ムスメのワタシハ、メシを作る地蔵。
チチは…………@$#%*&¥
□□□□
記録は、そこで途切れていた。
私は、一体何を読んでいたのだろう。
もしこれが本当なら、地球人になりすましたモノが二人いることになる。
いや、本当に二人なのか?
『父』は?
少なくとも、三人はいるのではないだろうか。
まあ、これが本当だとしたら、だが。
地球人に成りすました宇宙人など、いるわけがない。
そんなことが、あるはずがな
(記録は、ここで途切れている)




