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7話 五年の過ち

 街から低レベルの魔物が蔓延る草原に向かった二人は、ゼルが追いかけてこないこと、そして魔物が襲ってくる様子がないことを確認したのち、ロワがアリアに向かって悲しそうな表情をした。


「ごめん、あいつがそんな奴とは思ってなかったんだ」

「気にしてない。それより私は貴方が心配。あんな気持ち悪い男でも、仲間だったんでしょ?」

「……」


 応えることなくロワは頷いた。微かに悲しいでいるような表情に、アリアはため息をつきロワの腰を力強く叩いた。


「いったぁ!?」

「そんな暗い顔してたら魔物に襲われちゃうわ」

「そ、それはそうだけど……叩く必要あった!?」

「気合いよ気合い。――それより、……ロワ、一回あそこにいる魔物に向かって魔法使ってくれない?」


 悪びれる様子もなくアリアは少し遠くにいるゴブリンの集団に指をさした。彼らはまだ二人の存在に気づいていないようでどこかへ向かって歩いていた。その光景を見てロワは首をかしげる。


「なんで?」

「確かめたいことがあるの」

「え~? 魔法結構消費するんだけどなぁ……分かったよ。『ファイア』」


 困ったような顔つきで、ロワは杖を構えゴブリンの集団に向かって下級炎魔法を打ち込んだ――瞬間、巨大な炎の柱がゴブリンを包み込んだ。アリアはその光景を見て唇を引きつらせ、ため息をついた。


「どうして『ファイアラン(最上級炎魔法)』を打つの」

「え? アレは『ファイア(下級炎魔法)』だぞ?」

「……はぁぁ……そういうこと……ロワ、貴方普段どれだけ魔法に魔力を込めてるの?」

「え? ……これぐらいだけど?」


 呆れた様子のアリアに、ロワは手で小さな丸を作った。


「分かりにくい。……あのね、ロワ。普通ばかすか魔法を打たないか、魔力が少なければ魔力切れなんて起きないのよ」

「ばかすか打てないから……俺、魔力少ないのかぁ……」

「いやそれはない」

「え?」

「だってロワの魔力、海ぐらいの量なのよ。普通、あんな魔力で魔力切れなんて可笑しいと思ってたけど、原因分かった。貴方、無意識に下級魔法に魔力凄く込めてる。だからすぐに魔力切れになるのよ」


 びしっ。ロワの顔を指差す。ロワは一瞬アリアが何を言っているのか分からなくなってしまい呆然としたが、言葉の意味を理解し目を見開き大声を上げる。


「え、えええええええ!!!? な、なにそれ!!? 俺知らない!!! 言われたことない!」

「最初から変わらずやってたなら誰も気づくわけないでしょ。私だって魔力を吸うまでは魔力が少ない人間なんだなぁ~で済んだけどね」

「ご、五年も……魔術師やってて……ずっと気づいてなかっただなんて……」

「悲しむのはあとにしてくれる? 早くアレ、消してくれない?」


 衝撃の真実に頭を抱え叫ぶロワに、アリアは未だ治まる様子のない炎の柱を指差した。ずっと気づけなかったことに後悔と反省の念に包まれながらロワは炎の柱に向かって水魔法を使った。途端、炎の柱が大量の水の覆われる。

 炎の勢いが止んでいく光景を見てアリアはまた何度目かになるため息をついた。


「……ただの下級魔法に魔力こめすぎ……」

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