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5話 愛し子

「——そういえば、あの時聞けなかったけど、貴方の親って何の魔物?」


 アリアに魔力を食われた翌日、街中でアリアがロワに向かって疑問を口にした。

 魔物。それは化物や、モンスターと呼ばれる存在。魔界と呼ばれる魔物だけが住む世界にいて、基本的に人間の世界に干渉はしない(例外として、人間と結婚し人間界に来る者はいる)のだが――時たま理性を失って人間界に来るものや、人間界の支配を目論む者などが来たりするので、人間は冒険者という制度を作り、世界に悪影響を及ぼす魔物を討伐し身を守っていた。

 ロワはアリアの疑問に首を傾げた。己を産み、17歳まで育ててくれた親はどちらも人間。17年共に過ごし、一度も両親は『詠唱もなしに魔法を使う』『異常な肉体』『体が変異する』という魔物である証拠が出ることがなかったので、ロワからすれば親のどちらかが魔物ということは絶対にない。


「俺の親はどっちも人間だぞ?」

「それは絶対にない。人間が魔法もなしにあんなこと(詠唱なしで洗脳)は出来ない、親族に魔物に絡んでないと……というか親のどちらかが魔物じゃないと出来ないことなの」

「そう言われても……俺は生まれも育ちもバルツ村なんだけどなぁ……」

「……じゃあ、その額の模様って何? 魔物の親がいるって証じゃないの?」


 困惑しているロワの様子に、アリアはビシッとロワの額を指差した。ロワの額は青い前髪によって隠れているが、時々風に揺れて額にある金色のひし形模様が見え隠れしていた。ロワは額にある模様を軽く触り、頬をかく。そして幼い頃に両親に聞いたことを思い出しながらアリアに説明する。


「えーと、バルツ村には生まれた時に体のどこかにひし形の刺青を入れるって風習があってさ……魔物とは一切関係がないんだ」

「……何その風習。変なの」

「母さんが言うには『子供が末永く健康にいられるように神様の刺青を入れる』って。ひし形の神様って何なんだろうな」

「そんな神、聞いたことも見たこともない」

「アリアちゃんはまだ幼いから、もしかしたらいるかもしれないぞ!」


 片手でガッツポーズをし、ロワは笑顔をアリアに向けた。アリアは冷めた表情を変えることなくロワに向かって衝撃の真実を口にする。


「……私、この姿だけど500歳は超えてるわよ」

「えっ!?」

「だからそんな神、見たことも聞いたこともないわ」

「え、ご、500!?」


 アリアから発された言葉があまりにも衝撃すぎてロワは驚いてしまい、公共の場だというのにアリアの年齢を大声で言葉に出してしまった。瞬間、アリアは眉を下げ、怒りの表情を歪め、ぴょんっと飛んでロワの両頬を抓んで引っ張っる。


「公共の場で女性の年齢を大声で言わないの!!」

「いひゃい! ご、ごめんなさい!」

「もうっ……!! 次からは気を付けること、いいわね?」

「は、はい……。……ねぇアリアちゃん、これだけは聞かせて。なんで女の子の姿をしてるんだ?」

「この姿だと色々得なのよ」


 ロワの脳裏にアリアを助けた時の記憶が蘇る。料理人のような男に痛めつけられ弱まっていたアリア。決して得をしていたようには見えず、ロワは首を傾げ疑問を口にする。 


「……あの人に痛めつけられてたのに?」

「あれは……ちょっとしくじっちゃっただけだから。いつもは皆私を可愛がるのよ!」


 不機嫌な様子で、ムスッと怒りの表情でアリアはロワの疑問に答えた。その目に宿る『絶対に分からせてやる!』といった様子の強い決意にロワは「……復讐とか考えないでね?」と恐る恐る声をかけた。すぐに「しないわよ」と明らかに機嫌が悪そうな返事が来た。

 アリアの様子にロワはどう声をかけようか悩んでしまう。眉を下げ、目に見えて困って様子を見せる。


(これ以上怒らせたくないなぁ……。————ん?)


 次の言葉を悩んでいると、ロワの視界に気になるものが映った。視線を向ければ巨大な掲示板があった。毎日様々な出来事が載せられている掲示板、ロワはそういえば……と昨日魔法を使ってしまったことを思い出し、嫌な予感を抱えた状態で掲示板に近づく。


「ロワ?」

「ごめん、ちょっと気になることが」


 掲示板の文字が見える位置まで移動し、ロワは木の板に張り付けられている紙を一つ一つ内容を軽く読んだ。そして気づく——ロワの情報がどこにも書いていない。いくら路地裏で魔法を使ったとしても、あの場には男がいたし、魔法で周囲に被害が出ていた。そしてそこから出たロワの姿を通行人は見ていたはず。だというのにその情報は一つもなくロワは困惑してしまう。


(なんで……?)

「ロワ? どうしたの?」

「……いや、なんでもない」


 普段はどんなことでもそこまで思いつめない性格のロワなのだが、今回ばかりは妙に何かが引っかかってしまい、違和感が心に残ってしまう。だけども、アリアを心配かけさせまいとw顔をつくり二人は掲示板から離れた。——そんな二人を物陰から誰かがじっと、見つめていた。


「…………気持ち悪い」

「? アリアちゃんどうかした?」

「なんでもないわ。それより、ロワに色々教えたいことがあるの、付き合ってくれる?」

「いいぞ~」


 視線の主に気づいたアリアは、ロワを街中へと連れ出していった。視線の人物がついてくれば締めれる。ついてこなければ話した通り色々なことをロワに教えることが出来る。どう転んでもアリアにとってその提案は得でしかないのだから。

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