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3話 狼とサキュバスのハーフ

「……お兄さん、どうして私を助けてくれたの……」

「ん? えー、見てて気分のいいものじゃなかったから?」

「……お人好し……」


 道具袋を漁っていると、少女がロワに話しかけて来た。ロワはやっと警戒を解いてくれたんだな! とポジティブに考え嬉しくなった。

 少女は小声でロワに問いかけ続ける。


「お兄さんは、何をしてる人なの……?」

「えーと。無職……になるのかなぁ……? ちょっと君に出会う前にパーティーから追放されちゃって〜……あはは〜」

「……一人ってこと?」

「そうなる〜」

「……そっか……お兄さんも一人なんだ……」


 クスリ。少女は楽しそうな表情をして笑顔を浮かべた。その顔を見てロワもぱっと顔を明るくさせ嬉しそうに微笑んだ。


「っ……」

「あ、そうだ君の名前って聞いてもいい? ……? どうしたんだ?」

「……アリア。アリアって呼んで?」

「アリアちゃん! 可愛い名前だ! ――え、と、アリアちゃん? なんか、近くない?」

 少女、アリアは喉を鳴らしロワに急接近した。体と体が重なり合うぐらい近づき、ロワはアリアが何がしたいのか分からず困ったように眉を下げた。そんなロワの反応にアリアは気に求めず、ロワの服に手を伸ばし――勢い良く破り捨てた。


「――へ?」

「……もう、我慢できない! いただきます!」

「ちょっ、アリアちゃん!?」

 

 アリアの異常行為にロワは慌ててやめるように制止するが、先にアリアがロワの首筋に噛み付く。


「んっ……硬い……? ならっ――!」

「なにし――ぃ゛っ!?」

「っん……んう……」

「は゛っ、な゛にっ!? アリアちゃんっ、なに、して!!?」


 ぶちり。と皮膚が破れた音と共にロワの体に痛みが走った。続けて吸われている感覚がしてロワの頭は混乱する。


(は、なんで?! 吸われてる!? お、俺の血、吸われて、なんで、獣人って、人食べるの?!)


 混乱した頭でも今の状況をやめさせないといけないのは理解出来る。ロワはアリアを肩を掴み力一杯に押しのけようとする――が、小さな体のどこにそんな力があるのかと思う程びくともしない。その間もジュルジュルと血を吸われていき、ロワの力は段々と弱くなっていく。

 アリアがロワから離れたのは、ロワが貧血気味になってしまい完全に抵抗出来なくなってからであった。

 血のついた唇を舌で舐めとり、アリアは恍惚な表情を浮かべる。


「っん〜〜〜!! おいっっっしい!! なにこれぇ……あまぁい……今まで食べたどの人間より一番美味しいだなんて……」

「あ、りあ、ちゃん……な、なんで……」

「ふふ、おにーさん、驚いた? 私、狼とサキュバスのハーフなの。普段は魔力のある血液なんて吸わなくても生きられるんだけど……お兄さんは……見ているだけでお腹が減っちゃって……ふふ……美味しかったぁ……」

「獣、人……じゃない……? サキュバス……? サキュバスって……あの……」


 血液不足で回らない頭を無理やり働かせ、ロワは思い出す。

 サキュバス。夢の中で美しい女性の姿として現れる、人を魅了し捕食するとされている魔物。――それがアリアの正体だって? 今は現実じゃないのか? サキュバスに対し浅い知識しか持っていないロワは混乱してしまう。

 アリアはロワの弱々しい反応を見て嬉しそう微笑み、ロワの頬を優しく撫でる。


「獣人ってよりかは獣夢魔? うーんダサい。それより、私お兄さんの魔力気に入っちゃった。眷属にしていーい?」

「……けん、ぞく?」

「そう!  眷属! 一生私のモノになるの! 大丈夫、次からは痛くしない。最高の快楽を与えてあげる」


 両手でハートを作り、アリアは笑う。ロワは彼女の言っていることが理解出来ず弱々しく首を横に振る。

 

「な、に? 快楽……? なに、それ、いやだ……やめて……」

「……え? そういうこと(性行為)、知らないの? ……お兄さん……こんないかにもヤってますーってメス顔してるのにピュアなんだ」

「……は? なに、メス……? まって、なに、やめて……やめてくれ……」


 仲間によって『お前はそういうのまだ早い!』と知識を得ることを阻まれた結果、性知識! 性行為何も知りません! 子供? コウノトリが運んでくるんだろ? な成人済み男性になっていた。

 アリアはロワの顔を見て「えぇ……? この顔なのに……?」と困惑した様子を見せてから視線を右往左往させ、頷いた。


「……1から教えるのもいいかもしれない」

「な、なにを……!?」

「お兄さんが気にすることはないよ。さ、契約……しよっか」


 アリアがロワに向かって何かを唱えだす。するとロワの心に異常が訪れた。――従わなくては。アリア様に全てを捧げなくては。これは喜ばしいことだ。――そんな思ってもいない喜びの感情がロワの心に浮かび上がり、ロワは恐怖を感じた。


(い、いやだ、いやだ、何か分からないけど、これは駄目だ、絶対、駄目なことだ!! いやだ、いやだ――)





「『やめろ!!!!』」

「――――はい、女王様。アリアは契約を中断します」

「…………え?」

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