学生塔入学試験
第四話です。深夜テンションながら書いております。書き溜めがないので時間帯ばらばらですみません!!読んでくれて超超超感謝です!!
エルマーと共に《学生塔》の入学試験を受けることになった。
現在の時刻を確認しようにも、どうやら魔界では常に空が赤い雲に覆われている為昼なのか夜なのかがわからない。いわゆる《魔法》というやつがそれを実現しているのだろう。
ここで勉強することができれば、その魔法をも習得の可能性がある。
「エルマー、そういえばなんだけどさ」
「ん? なんだい?」
城の地下にあるという試験会場までの道のりで、エルマーに聞けることはなんでも聞くことにした。
「ネクロマンサーってのはどんなやつなんだ?」
「そうだね~、ネクロマンサーは《ネクロマンシー》という死者や霊を操る術師のことで、死体を使ってゾンビやスケルトンを生み出し使役したりできるんだ」
「ゾンビを生み出せる……」
どういう偶然か、俺の村を襲ったゾンビの群れがそのネクロマンサーであることを知る。
「そんな……死体を使っていたのか」
「僕もあまり好きではないよ。先の人類軍との戦いでも、倒した人類軍の死体を利用してゾンビを生み出し、勢力を強める戦術を取っていたらしいよ。敵だからといって、そこまで命を軽々しく扱うなんて酷いよね」
そう考えると、俺の村を襲ったゾンビの群れの中には、人類軍の兵士もしくは村の人の死体でできているやつもいたのだろうか。
様々な光景がフラッシュバックして吐き気を催す。
やっぱりココネたちはもう……。
「お、おい大丈夫かい? ますます変なやつだな。君も僕も同じネクロマンサーだっていうのに」
エルマーもまたネクロマンサー。そして俺も、その素質があるらしい。
言い換えれば、死者を贄に自分を守る意思無き兵を生み出す術を扱える者。
村を襲ったやつと、同じ種という皮肉。
「そう思い込むことはないよ。本来、ネクロマンサーは命を軽々しく扱う種族なんかじゃない。死者からの知識と意思を繋いで、次に託すことができる存在なんだ。こんな血に塗れた大地でも、希望を持つ者たちの意志を未来へ託す……重要な役割だと僕は思うよ」
足を止めたエルマーは、真っ赤に染まった空を見上げてそう語った。
「知識と意思を、未来へ託す……か」
「相当な修練をしないと、死者の声は聞こえないらしいけどね。道のりは長いよ」
要は力の使い方の問題だ。それに、人界に住んでいた俺が、魔界に住むエルマーとこうして平等に話せている。この容姿のおかげかもしれないが、いつか俺の過去を話す機会があったとしたら、彼はそれを受けて入れてくれる気がする。
人界と魔界が、手を取り合える世界……それが神様の言う『平和』なのかもしれない。
余計にこの魔界という世界を知りたくなってきた。本当は誰も、血を流したいだなんて思っていないはずだ。種族の壁さえ越えることができればいずれは――――。
「そろそろ行こうか、試験時間に遅れちゃうよ」
「あ、ああ」
地下への階段を降りていくと、目の前に現れたのは巨大な扉だった。
「ここが試験会場の地下決闘場だよ。さ、行こう」
エルマーが扉に杖をコン、と当てると、その僅かな衝撃で厚みのある鉄扉がゆっくりと開いていく。
中に入っていくと、奥にもう一枚の扉があり、その手前には一人の男が立っている。
周りには待合室のような小部屋がいくつかあり、俺らと同じ受験者が出入りしていた。
「試験を受けるのか?」
「はい。僕と、この人が」
エルマーは試験官と思われる男に声をかけ、話を進めていく。
「残念だが二人同時の試験は無理だ。必ず一人ひとりで受けてもらうが問題ないか?」
「もちろん。よろしくお願いします」
礼儀正しく試験官と話すエルマーを見ていると、本当にここが魔界なのか疑わしくなってくるな。
というか流れでここまで来てしまったけれど、恐らく決闘場ということならここで行われる試験というのは……。
「試験は単純だ。中で待っている試験官と戦い、一発当たれば合格。掠ってももちろん合格。試験官は《攻撃魔法》に含まれる全ての魔法を使わない。存分にぶち当てるといいさ」
やはりそういうパターンか。でも有難い、魔物と戦って勝つより勝機がありそうだ。
「じゃあそろそろ始めるぞ。お前からでいいな?」
「はい。じゃあ、また後で会おうね」
エルマーが試験官と話し終えると、俺の方へ振り向いて手を振った。
反射的に俺も手を振るが、そもそも俺が試験に受かる可能性はかなり低いだろう。
これが最後の会話かもしれない、と少しだけ寂しく思ってしまった。
もう一枚の鉄の扉が開く。
扉の奥はここよりもずっと明るい空間になっており、その眩しさに目を細めてしまう。
光に包まれながら試験へ立ち向かうエルマーの背中を見送った後、再び扉は閉じられた。
「あんたも受けるんだろ? 武器とか持ってないのか?」
「実はさっきここに来たばかりで何も持ってないんだ」
「おいおい嘘だろ、ここまでどうやって来たってんだ? ワイバーン山脈やバベルの塔を踏破しない限り誰も来れやしない場所だぜ?」
また知らない単語がでてきた。恐らく、この城に辿り着くには相当な危険と試練を乗り越えないといけないのだろう。まあ、上空からやってくればそれも意味を成さないというわけだ。
「えっと……空から?」
「はっはっはっ! 面白れぇなあんた! 流石、試験を受けるだけのことはあるな」
腹を抱えて手を頭に添えながら盛大に笑う試験官は、どうやら俺のことを気に入ってくれたらしい。
「――――そこの待合室に、試験で落ちたやつが使ってた武器が捨てられてるから好きに拾って使うといいさ。本当は武器の貸出は禁止なんだけどな。内緒にしとけよ?」
「もちろんもちろん」
顔を見合わせてにしし、と笑い俺は待合室の方へ向かった。
そういえば、試験官の男は割と普通の人間だったな。
小部屋の一つに入ると、そこにはシンプルな木製の机と椅子が乱立している。
部屋の角には確かに武器になりそうなものが転がっていて、槍や杖、棍棒など様々だ。
「――――おっ?」
目に付いたのは、一本の小太刀。
シュウレンじいさんが使っていた刀より短いが、今の俺の体格ではこれぐらいが丁度いい。
拾い上げると思っていたよりも重量が軽く驚いてしまった。木刀よりも軽いこれではまともに実戦では使えないだろうが、これはあくまで試験用の機動力を重視したものだ。良い考えだとは思う。
ついでに木の棒にも見える小さな杖も回収し、再び試験官の元へ戻ることにした。
部屋を出ると、試験官がこちらを見るなり手を振ってきている。どうやら俺の番がきたらしい。
「武器は調達できたみたいだな。それにその刀……ちょっとサマになってるぜ」
「それはどーも」
「――――どうやらあんたのお友達の試験は終わったみたいだ。次はあんたの番だぜ」
エルマーが向かっていった鉄の扉が再び開いていく。
とにかく一撃を当てる、それだけを考えよう。
グッドラック、背中から微かに聞こえてきた試験官の声を受けて、もう一歩扉の向こう側へ行く。
重くゆっくりと閉まっていく扉がこれ以上の後戻りを許さない。
「――――行くぞッ!」
「――――《精霊魔法》、起動」
中にいる試験官に先手を取るべく顔も見ずに突撃した俺は、聞き覚えのない魔法の発動によって視界を白く染められてしまった。
――――クソ、妨害するのはアリなのかよ!!
視界は奪われたが、足も止められているわけではない。
最初に見た試験官の位置はまだ覚えている。それならまずはやれることを試さないと。
俺はあの遥か北の大地で最強と名高い秘剣使い、シュウレンの弟子なのだ。じいさんと鍛えてきたこの技を使って、この試験に合格する――――!!
「――――《秘剣・抜刀撃》ッ!!!!」
こうして、俺の学生塔入学試験は始まる。
読んでいただいてありがとうございます!!!! なんとかつづきを書くモチベはあるので、せっかくならいけるところまで書ききりたい所存。レビュー・感想・ブクマいただけると超嬉しいです。次回更新予定は未定!