『魔王城シュヴァルツェ』
読んでいただきありがとうございます!! どうせ書くなら毎日投稿を頑張りたい、がモチベはそろそろ尽きそうな如月カイキです。
また死んでしまった。
神様の力で人界に蘇らせてもらったというのにこの有様では、神様に合わせる顔が無いぞ。
いやしかし、これは神様にも非があるというものだろう。いきなり生き返させられた上に、遥か上空からの落下とは聞いていない。神の加護によって落下の衝撃を防いでくれるものだと思っていたが、確実に見知らぬ大地へ不時着し、死亡した。
意識の覚醒を感じ、重い瞼をゆっくりと開ける。少しくらい神様に文句を言っても罰は当たらないだろう。
再び暗闇の空間――ではなかった。
どこかの部屋の中で、俺はベッドに横たわる形で目を覚ましたのだ。
何が起きているのだろう。命を二度落としたはずなのに、まるで何事もなかったかのように眠りから解き放たれる。
「あっ! ようやく目を覚ましたね」
俺にかけられた声は、神様のものとは違った。明るく穏やかで、太陽の日差しのような心地良ささえ感じる少年の声。村の酒場で一曲歌ってみせれば、朝まで宴が終わらなくなるだろう。
俺が横たわるベッドの隣で、椅子にかけたままこちらを覗いてきた彼の顔を見た時、俺は驚きを隠せなくなる。
黒のローブに灰色の肌と黒紫の眼、奇妙な装飾品が耳と腕を飾っている姿。今まで見てきた人間とは明らかに何かが違う。
「ご、ごめん! 君を怖がらせるつもりはないよ。だって君、誰かに《召喚》されて来たアンデットだろ? 君を呼んだ召喚士が見当たらないから、僕がこの仮眠室まで連れてきたんだ」
召喚? アンデット? 聞き慣れない言葉だ。その言いぶりからして、俺は何者かによって呼び出されてここにいる認識らしい。
「――にしてもすごいね君。盛大に広場へ激突したのに生きてるなんて。もしかして、アンデット化された《ネクロマンサー》だったりしてね。そうだとしたら召喚士は相当な凄腕だよ!」
にじり寄って来る彼の顔は、近づけば近づく程人間味がない。この場合、俺の容姿は少数派なのかもしれない。
「――――ん?」
部屋の全身鏡が目に映った。
おやおや? 俺の姿はどこだ? この部屋にいるのは二人、俺をここまで運んできたという少年の姿と、もう一つは灰色の肌と黒髪の青年。碧眼を鈍く輝かせているその姿は、俺が手を挙げると僅かな間を置かずに同じ動作を返してくる。
「ななな、なんだこれ!?」
「ヘンなやつだな~。面白いね、君。僕はエルマー、君の名前は?」
差し伸べられた手を取り、ベッドから出る。
なぜこうなったかはわからないが、少しだけ状況は理解できた。
ゾンビに噛まれ死亡した俺は神様によって再び生き返ることとなったが、その際に空中から落下しそのまま死亡。しかし、俺の身体は何事も無く元通りになりこのエルマーと名乗った少年によって仮眠室とやらに運ばれてきたらしい。
更に驚くことに、俺の容姿は生前のものとは大きく異なっていた。ある意味この姿は、エルマーとよく似ている雰囲気がある。もしかすると、俺は生き返る際に彼の言う《アンデット化》し、死んでもその場で蘇る力を得てしまったのかもしれない。
これではまるで魔物と同じではないか。となると、ここに落ちて来る際に見た景色は人類が暮らす《人界》ではなく、魔物の巣食う世界なのかもしれない。
「名前を言うだけでそんなに難しく考えなくても……ってそうか。召喚されたばかりなら名前が無いことの方が普通だよね」
「は、はあ」
名前……名前……。おかしい。頭の中で靄がかかって自分の名前が思い出せない。生き返りの代償ってやつなのか? 生前呼ばれていた名前を思い出そうとすると、ズキズキと頭が痛くなってしょうがない。
「せっかくだし、この城を案内するよ。もしかしたら君を召喚した召喚士に会えるかもしれないし」
「よ、よろしく」
エルマーは部屋の壁に立て掛けていた杖を持って扉の向こう側へ行く。彼の身長よりも大きい杖は、果たして何の為にあるのだろう。
仮眠室を出ると、前方と左にそれぞれ廊下が続いている。建物の内側の壁は格子状になっており外の景色――恐らく俺が激突したであろう広場――が広がっていた。
広場を囲む形で正方形の廊下になっており、壁沿いに各部屋の看板と扉、上階へ上がる階段などがある。ちなみに俺らがいた仮眠室は一階の部屋だ。
「二階からは教室が続いているんだ。ここはこの城の四つある塔の内の一つ、『学生塔』さ。魔法や武術に秀でた若き者たちが、ここで知識と技術を蓄えて生活をしてる。実は、僕もこれから入学試験を受けるところだったんだ」
「試験って……俺に構ってて大丈夫なのか?」
「時間はまだ大丈夫だよ。むしろ試験前に誰かと何か話しておきたかったくらいさ。一人でいると緊張しすぎてお腹痛くなっちゃうしね」
「そ、そうなのか」
人間ではない、そう勝手に断定していた。
しかし、エルマー含めこの学生塔で生活している者たちは、俺と同じように生きている。といっても、俺も人間とはいい難い姿になってしまっているわけだが。
「せっかくなら君も受けてみたら? もし本当にアンデット化したネクロマンサーなら、魔王軍幹部候補にだってなれちゃうかもしれないね」
あはは、とわざとらしく笑うエルマーだが、それも緊張を紛らわす為のものだろう。
魔王軍幹部候補、こんな言葉が出るということはやはりここは人界ではない。魔王軍とその卵が住む世界、いわば《魔界》といったところか。
そうなるといよいよ不味いことになっている。ここが人界でないなら、俺が行くべき人類軍の本拠地からかなりの距離があるだろう。そもそも地続きになっているかもわからないし、とにかく情報が欲しい。
それに、先程からちらちらと視界に入ってはこちらを覗いてくる異形の生物たちを見ていると気分が悪くなる。村に襲撃してきた時の魔物とはまた違う形状をしているし、魔物の種類は計り知れない。
「それ、本当に俺も受けられるのか?」
口を開けていたエルマーがすぐに驚いた表情を見せる。
「う、うん。試験は基本的に誰でも受けられるよ。でも、ウワサによればかなり厳しいみたいだよ」
「やるだけやってみるよ。ほら、俺を召喚したやつに見つけてもらう為にも、ちょっと手伝ってくれないか?」
「それもそうか……。もし君が合格して名を揚げれば早く見つかるかもしれないしね」
協力者一人確保。ここから情報や世界情勢を知って、神様に貢献する術を探そう。
エルマーに手を伸ばして、よろしくの意味を込めた握手を交わす。
「これからよろしく」
「うん! ようこそ、《魔王城シュヴァルツェ》へ!」
――――ん? 《魔王城》?
いきなりラストダンジョンのお出ましか。まさか神様、わざとじゃないよね?
俺もエルマーと共に、試験前の腹痛と激闘を繰り広げることとなった。
最後まで読んでいただきありがとうございます! そろそろ書く勢いが収まってきているので、レビューとか感想とか頂けるとめちゃめちゃめちゃめちゃモチベに繋がるのでおねがいします。次回更新予定は未定です。