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4.田舎への帰郷

 翌朝、冒険者ギルドで、メンバー登録抹消の手続きを済ませてから、俺はパーティと別れた。


 リリーナを見ると、他のメンバーの男と冗談を言い合っている。


 短いスカートをはいたリリーナの尻を、他の男がふざけて叩くのを見て、俺はなぜかボッキしてしまい、ポケットに手を突っ込んでゴマ化したが、特に誰にも見られなかったようだ。


 別れる間際、他のメンバーは俺に背を向けていたが、リリーナだけは小さく手を振ってくれた。


 もう二度と、彼らと会うことも無いのだろう。



 一人で冒険者をしても、自分の強さでは魔物に殺されてしまうだけだと思い、俺は故郷に帰ることにした。


 両親が小作農として生活していたので、後を継いで、自分も畑を耕して生活するしかないと思った。


 

 ★  



 しかし、故郷に帰ると、あばら家のようになった実家の家には、誰も住んでいなかった。

 家の周りの畑も荒れ放題になっている。


 街の人に尋ねると、父は死んでしまい、母は福祉施設に預けられたのだという。


 土地を借りているお金を地主に払わなければならないのだが、それも長期間滞納しているという。


 両親の生活費の足しになるようにと、故郷には毎月、給料の半分を送っていたはずなのに。



 母が預けられた施設を訪ねると、貧困者向けの部屋で寝たきりになっている母は、俺を怒鳴りつけてきた。


「あんたが少ししかお金を送らなかったから、肥料が買えなくて、畑が荒れ放題になったんだ! 地主さまへの小作料も払えなくなったんだ、役立たず!」


 俺は、何も言えなかった。



「何か言ったらどうなんだ! 冒険者になると言って出て行ったが大成せず、帰ってきたくせに! 何の取り柄もない一般庶民が、勇者様のパーティでお役に立てるはずがないんだよ! ウドの大木が!」


 たしかに。

 必死で身体を鍛えて、戦士としてパーティに入れてもらったのに、ロクに活躍できなかった俺には、反論しようが無かった。


 他の冒険者は魔法やチートスキルを使って、強そうな魔物を倒していくのに、幼い頃から身体を鍛えただけの俺は、冒険の初期以外ではほとんど役に立たなくなり、最後は、荷物持ちをするしかなくなっていた。


 俺には何も無かった。

 勉強ができるわけでも無かったので、雇ってもらうとしても零細企業くらいだったが、幼い頃から農業と冒険者くらいしかしてこなかったので、もはや働き先も少ない。


 他には、清掃員か警備員くらいしか思いつかなかったが、実家で農業をするのと、どちらが良いのだろう。



 俺にも、魔法やチートスキルが使えたら。


 俺にも、魔法やチートスキルが使えたら。



 しかし、そんなものは俺みたいな一般人には使えず、使えないからこそ、使える人はこの世界で価値が有るのだった。 



「大男! 役立たず! 実家に帰ってきたと思ったら、無職になって! なんだこのハシタ金は! 小作料を払ったら、これしか残らなかっただと!? それじゃ、このまま施設で骨と皮になって飢え死にしろってのか! この親不孝者が!」


 俺は怒鳴られ続けるばかりだった。


 僧侶のリリーナからもらったネックレスを売らないと、滞納した小作料を払えず、農業をする道具や肥料等を買えなかったので、売るしかなかった。


 そして、残ったお金の一部を、お見舞いとして母に持って行ったのだった。

 

 もはやどうしようもなく、怒鳴り続ける母に背を向けて、俺は施設を出た。


 

 その後、俺が渡した見舞金で、母は酒やご馳走を買い込み、すぐに金を使い果たした後、死んでしまったと聞いた。

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