3.リリーナ
そして、僧侶のリリーナと俺の2人だけになってしまった。
魔法使いが残していった食べ物で美味しそうなものを、リリーナはつまんで食べている。
無言の状態が続いた後、彼女が話しかけてきた。
「大男、どうして退職金を減らしていいって言ったの?」
『いや、何となく……』
「何となくって。いつも思ってたけど、あんた、そんなお人好しで大丈夫なの?」
『別に、お人好しじゃ……』
「退職金も貰わないで、これからどうするの?」
『……』
「何か言ったらどうなの、役立たず!」
冗談というように優しい口調で言うと、リリーナは笑った。
そして、飾りがついたネックレスを首から外すと、俺の手に握らせてきたのである。
「これを売れば、あんたの安い給料の6ヵ月分くらいにはなると思うから、その間に、次のことを考えなさいね」
『これは、冒険に必要な、魔法加護のネックレスではないのか? そんな物はもらえない』
「クビになるあんたが、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ」
『だが……』
「ああ、もう! 同じパーティに居た大男が、クビになって盗賊にでもなったら、私たちが恥ずかしいからよ、これでいいでしょっ」
『……』
俺は何も言えずに、隣の彼女を視界の端に入れた。
しかし、薄い上着からは、小ぶりな胸が透けて見えそうで気まずくなり、目を背けてしまった。
「もう! 私たちも頑張るから、大男も、ちゃんとしてよね!」
そう言って、リリーナは俺の背中を軽く叩いたのである。
★
2人だけの食事が終わった後、宿屋の入り口で彼女と別れ、俺は一人になり、自分の部屋に戻った。
そして、静か過ぎる部屋でベッドに横になると、これからのことを考えようとしたが、面倒くさくなってやめた。
代わりに、隣に座ってくれたリリーナの柔らかそうな身体を思い出し、シコった後、眠りについたのである。