9.緊急
「君をスカウトした理由。これを話さないと何も始まらないわ」
「俺をスカウトした理由……か。確かに聞いてなかったな」
確か『特殊な人間』が欲しかったとか言っていたような気がする。
俺が特殊な人間に該当するかは分からないが、ともあれ何かワケがあって俺を誘ったんだろう。
「私たちは国家直属の冒険者になりたいの。世間ではそういう人たちを勇者だったり賢者って呼んでいるわ」
「国家直属って……かなり難しいことなんじゃないのか?」
「とっても難しい。私たちも頑張ってSランクになったけど、それでもまだまだって感じ」
王都のギルド一の冒険者がまだまだってことは、多分相当な難易度なのだろう。
でも俺が仲間になってもあまり変わらないような気もするが……。
そんなことを考えていると、ぎゅっとアンナが手を握ってくる。
「あなたが希望なの。きっと、私たちは直属になれる」
「リッター様は魔法ですから……賢者とかにも本当になれるかもしれません。いえ、絶対になれます」
賢者、か。
俺はあまりよく分からないけれど、彼女たちには恩がある。
実際に魔導書をくれたし、俺に居場所なんてなかったから色々と助かっている。
手を貸さないって選択肢はなかった。
「俺が希望になれるかどうかは分からないけど、よかったらお手伝いさせてくれ。魔導書をくれたお礼もしたいし」
「ありがとう!! やっぱり君は最高だよ!」
「ですです! リッター様最高!」
あはは……大げさだなぁ。
でも認めてくれるのは嬉しい。
前世も今世も、認めてくれる人なんていなかったから。
少しでも頑張ろう。
誰かの役に立てるように。
「それじゃあ――」
アンナが俺に声をかけようとした瞬間のことだった。
「アンナさん! 大変です!」
訓練場に慌てて入ってくる女の人が見える。
服装からして、受付嬢さんだろうか。
「依頼に向かった冒険者から緊急の連絡が届きました! どうやらAランクのオーガに襲われて壊滅に近い被害を受けているようで……! 帰還することも困難らしく!」
「なんですって!? 死者は出ていないのよね!?」
「今は出ていません! とにかく、頼りになるのはアンナさんたちだけなんです! ……お願いできますか?」
どうやらかなりヤバい状況になっているらしい。
アンナがこちらに振り向き、行けるかどうか聞いてくる。
だけど聞かれるまでもない。俺の答えは決まっている。
「俺も行きます! 何か手伝えることがあればなんでも任せてください!」
「いい返事、ありがとう。エイラ、行こう!」
「はい!」
よし……迷惑かけないように頑張ろう。
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