87.境目
「結界魔法が貼られているということは、どこかに境目があるはずです」
そう言いながら、エイラは前に進む。
「どこかで突然、魔力を感じる場所が出てくると思うのです」
境目、か。
結界ということなのだから、境目があるのは当然と言える。
しかし外に一切の魔力を漏らさないほどの高度な結界を貼れるだなんて、考えるだけでも恐ろしい。
もしかしたら、何も知らない人間がここに迷い込む可能性だってあるというのに。
俺はそんなことを考えながら、薄暗い洞窟の中を進む。
「意外とこの洞窟、浅くはないんだな」
「らしいね。といっても、内部は複雑じゃないからまだマシだけれど」
もしこれで内部までもが複雑だったら、普通に迷っていた可能性だってある。
万が一洞窟内で迷ってしまったら、助けを求めるのだって困難だろう。
「……変わりましたね」
エイラがぼそりと呟く。
そして、確かに俺も何かが変化したのは感じ取った。
「ここが恐らく結界の境目でしょう。突然魔力を感じるようになりました」
「なるほどな……魔力とかよく分かっていない俺でも、何かが変わったのは理解した」
魔力に疎い俺が理解できるほどなのだから、相当のものを結界で隠していたのだろう。
しかし、改めてここに万が一一般人が迷い込んだら……と思うと恐ろしい。
「ともあれ、結界の境目まで来たということは何かがある場所まで近いと思います」




