84.魔法を試そう
「何かって嘘だろ……? 間違いじゃないのか?」
アンナの一頃に、俺は動揺してしまう。
なんたって、最初に感じた洞窟に対する印象は『普通』だった。
禍々しい雰囲気が漂っているわけでもなく、何かが住み着いている気配もしない。
「私も間違いかと思ったわ。でも……エイラ」
「はい……洞窟に入る前は感じなかった、何かの気配を感じます……」
「おいおいマジかよ」
となると、やっぱりこの洞窟には何かがあるって考えた方が妥当か。
まあ、何もなかったら困っていたから逆にありがたいのかもしれないが。
「近づいてきてます……もう来ます!」
「分かった……!」
アンナが頷き、剣を引く抜く。
俺も慌てて、戦闘準備をする。
「あれは――ドレイクね」
「ドレイク……?」
聞いたことがない魔物だった。
あまり魔物には詳しいわけではないから、パッと見てもあまり分からない。
「ドレイクってのはドラゴンの子どもね。ともあれ、ドラゴンはドラゴン。かなり手強い相手よ」
「なるほどな……やっぱ魔物の名前って難しいな」
俺は頭をかいたあと、ぐっと拳を握る。
「まあ名前なんて関係ないさ。とにかく倒せばいいんだろ」
「さすがじゃんリッター。そういうところ、好きだよ」
「ははは。ありがたいお言葉だぜ」
にやりと笑い、相手に手のひらを見せる。
「まだ試していない魔法があるんだよな。ちょっとやってみるか」
少し前、俺は三属性の最上位魔法を入手した。
《絶対零度》は試したが、他の二つはまだ扱ったことがない。
せっかくなら、今試してみてもいいかもしれない。
「いくぞドレイク。俺の魔法を見せてやるよ」
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