8.《イカズチ》の記憶
「ここが訓練場か。やっぱ王都はすげえな」
訓練場に案内された俺は、あまりの設備に呆けていた。
筋トレ用の器具から、模擬戦用の器具までなんでも揃っている。
日本も首都は何でも揃っていたが、やはりこの世界でも同じらしい。
「魔導書……読むぞ?」
「読んで読んで! 君の実力をちゃんと見せて!」
「勉強できたら……魔法使いとして参考にします!」
よし……それじゃあ早速魔導書を読んでみるか。
どうやらこの魔導書は《イカズチ》の魔法が載っているものらしい。
属性は雷。
しかもかなり上位の魔法のようだ。
家にいるころはどんなにやっても手に入らなかったもの。
少し興奮してしまう。
「……オッケー! 《イカズチ》の記憶完了」
「早くない!?」
「本当にもう使えるようになったんですか!?」
俺がそんなことを言うと、二人は目を丸くする。
「え? 魔法って魔導書を読めばすぐに使えるようになるものじゃないのか?」
俺のスキルの能力はあくまで、魔法を無詠唱で発動できるようになるものと認識していた。
だから魔法を覚える分には誰でもできると思っていたんだけど。
「使えません! 訓練しないと普通は習得できないものですよ!?」
「マジか……? もしかして俺だけ?」
「あなただけです!」
「……びっくりね」
うーん、そうなのか。
まあ他にもできる者はできるだろう。
アルタール伯爵はスキルの詳細を聞きすらしなかったのだから。
「とりあえず魔法を放ってみるよ」
俺は近くにあった的を狙い、手のひらを向ける。
少し集中すればいい。
使いたい魔法を想像し――放つ。
「《イカズチ》ッッッ!」
俺が声を上げると、的に向かって雷が落ちた。
轟音が響き渡り、訓練場が微かに揺れる。
うおおお……すげえ。
やっぱ高い魔導書なだけあるな。
「本当にやっちゃった!」
「信じていましたが本当に無詠唱……!? しかもあの魔法、高度なものなんですよ!?」
二人が興奮しながら詰め寄ってくる。
特にエイラが興奮しているようだった。
「《イカズチ》はですね! 雷の精霊よ、我が掌に集まれ。イカズチぃぃってな感じで長い詠唱をしなくちゃいけないんですよ!?」
「俺のスキルは詠唱を省略できるんだよ。まあ、多少は強いんじゃないかな」
「多少どころの騒ぎじゃありませんよ! 革命です!」
「ははは……あまり褒めるなって」
全く大げさだ。
俺は別にたいしたことなんてしていないのに。
俺が頭をかきながら照れていると、アンナが声をかけてくる。
「君は天才だよ! よし、これから正式に仲間になるってことでもう一つ話さなきゃいけないことがあるの」
「話さなきゃいけないこと?」
尋ねると、アンナは静かに頷く。
「私たちの目的! 仲間になるからには、説明しないとね」