77.《治癒》の記憶
家に荷物を置いてきた俺たちは、宮廷図書館までやってきていた。
少し冒険者業のことは忘れて服を見ていたが、やはり俺たちの本命というか仕事はこれだ。
たまの休暇はありだと思うが、そればかりするのは似合わない。
図書館内を歩きながら、目的の場所まで向かう。
「やっぱり宮廷図書館は広いな……まだまだ余裕で迷えそうだ……」
「そうね。ただ、その分資料は豊富だから全然構わないんだけれど」
そう言いながら、魔導者が立ち並んでいるところまでやってきた。
相変わらず、小難しいものばかりがある。
「回復系の魔法が育ってないから、今回はそういうのがほしいかな」
「回復系ですか……この中から探すのは大変そうですね……」
エイラは数多くの魔導書が並んでいる光景を見て、辟易している様子だった。
それは俺も同じで、この中から探すとなると頭が痛くなってくる。
それに、俺は魔法の知識があるわけでもない。
背表紙をみたところで、魔法の知識がないからどれが回復系の魔法なのかも理解できない。
まあ、エイラが分かるっぽいから大丈夫だとは思うが。
ともあれ、全てエイラに任せるのも申し訳ない気持ちもあるのだけれど。
「回復系……回復系……」
エイラが唸りながら、魔導書をなぞっていく。
「エイラはすごいわよね。私は魔法なんて全く分からないから」
アンナが感心した様子でエイラを褒める。
すると、エイラは少し嬉しそうな表情を見せた。
「えへへ……魔法は好きですから。といっても、知識があるだけですけどね」
「謙遜するなって。知識ってのは武器になる。実際、エイラはかなりの技術を持ち合わせているだろ?」
「ふふふ。ありがとうございます」
エイラはそう言いながら、一つの魔導書を手に取る。
「ありました。回復魔法の最上位《治癒》です。これ……本来なら覚えようとすると何年もかかる魔法ですね」
エイラは魔導書をパラパラめくりながら呟く。
「むむむ……案の定何書いているか分からない……ここはリッター様の腕の見せ所ですね!」
「もちろんだ。任せてくれ」
俺は魔導書を受け取り、内容を確認する。
確かに難しい術式が書かれているが、しかし《ショートカットコマンド》があれば話は別だ。
全てを記憶し、魔導書を閉じる。
「コマンドオープン」
――――――――――――――――――――――
《治癒》を魔術書から記憶しました。
それに伴い《ヒール》を消去しました。
あなたが使用できるショートカットコマンド一覧
・《治癒》NEW!
・《スラッシュ》
・《聖者の剣》
・《絶対零度》
・《獄炎》
・《雷電》
――――――――――――――――――――――
「よし、記憶完了だ!」
回復魔法も最上位を手に入れることができたから、かなり戦闘が楽になるはずだ。
やっぱり、新たな魔法を手に入れる時はテンションが上がるなぁ。
「さすがです……! しかも無詠唱で発動できるんですからすごいですよね! この《治癒》って詠唱しようとすると、めちゃくちゃ長いらしいんですよね……」
「なら俺のスキルと相性抜群だな。しかし最上位がどんなものか試してみたいな……回復魔法なら、ここで試してもいいか」
一度、やってみるか。
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