76.良い経験だった
「リッターはどんな服が好みとかあるかな?」
アンナが俺のことをじっと見ながら聞いてくる。
どんな服……か。
あまり考えたことがなかった。
俺なんて、前世ではジャージばっか着ていたからな。
「リッター様はやっぱり格好いい系が似合いますよ! わたし、燃えちゃいます!」
「確かに格好いい系いいね! リッターってなかなかイケメンだからさ!」
「ですです! わたしが燃えちゃうくらいには顔がいいです!」
……イケメンって言った?
俺のことを、イケメンって言ったのか?
ははは。そんなバカな。
何かの聞き間違いだろう。
全く、陰キャをこじらせたら女の子にイケメンだって言われているのかと思い込んでしまうようになるのか。
なかなかの重傷だな。
「格好良い系なら……これとかどう?」
アンナが服を持って、こちらに見せてくる。
おお、これはなかなかいいかもしれない。
パッと見は冒険者服にも見えるが、普段着る服でも違和感がないようにアレンジされている。
白と黒を綺麗にあわせた、確かに格好良い服だ。
「これいいな! 良い感じだ!」
「それじゃ……わたしはこれとかどうですか! アンナが選んだ服に合わせる感じで!」
エイラが持ってきたものは、小さな黒のバッグである。
手に持ってみると、かなり軽くて扱いやすそうだ。
それに、収納スペースも良い感じ。
アンナに服を持って貰って、バッグと合わせてみるが、かなり合っているよう見える。
ふふふ……いいなこれ。
「採用! これ買うよ!」
言うと、アンナとエイラは顔をパッと明るくする。
「わぁ! 嬉しいよ!」
「間違いなく似合いますよ! ひゅー! ただでさえイケメンなのに、もっとイケメンになっちゃいますね!」
「ははは! てか、マジでイケメンって言っていたのか……からかうのはやめような!」
俺はイケメンだと適当なことを言っているエイラにツッコミをしつつ、会計を済ませることにした。
しかし良い買い物をした。
今まで生きてきて誰かと服を選ぶなんて経験、親としかしたことがなかった。
それに……まさか異性とだなんて。
前世の俺に言っても、きっと信じてくれないだろうな。
服屋から出た俺は、ぐっと背伸びをする。
「楽しかったね! たまにはこういうのもいいでしょ?」
アンナが微笑みながら聞いてくる。
「ああ。良い息抜きになったよ」
最初こそ陰キャ爆発していたが、なんやかんやで楽しかった。
今まで、こんなことした経験なかったし。
「この後は……まだ時間があるし荷物を置いてから宮廷図書館に行こっか。リッターの新たな魔法も手に入れたいしね」
「そうだな。今度はぶっ倒れないようにするよ」
「本当に倒れないでくださいね! 前回、すっごくびっくりしたんですから!」
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