70.これで自由だ
「疲れたわ……久々にこんなに疲れた……」
イダトが訓練場からいなくなり、なんか知らんが周囲の冒険者から胴上げされた俺は、やっと解放されてギルドの酒場にて机に突っ伏していた。
こんなにも疲れたのは久々だ。
アルタール家にいた当初はストレス全開だったから、いつもこんな感じだったけど。
こっちに来てからは幸せな毎日を送っていたからなぁ。
「お疲れ様。災難だったわね」
「お疲れ様です……! とりあえず、なんとかなってよかったです!」
「ありがとう二人とも。……色々と迷惑かけちゃったな」
イダトと俺のもめ事は、二人には関係のないことだ。
なのに、アンナたちは俺のことを助けてくれた。
本当に感謝しなければならない。
「いいのよ。だって、仲間じゃない!」
「そうですよ! 仲間なのですから、こういう時は手助けするものです!」
「……仲間か。そっか」
俺は少し嬉しくなってしまって、口角が緩んでしまう。
やっぱり、仲間ってのはいいな。
こっちに来てから、そんなことをずっと考えてしまっている気がする。
俺は、本当に恵まれているよ。
「イダトは帰ったし、今度こそ俺の邪魔をするやつはいないはずだ! 改めてよろしくな二人とも!」
「もちろん! リッターにも、いっぱい頑張って貰うからね!」
「ですです! 頑張りましょう!」
二人が差し出してきた手を握り、俺はこくりと頷く。
「さて……さすがに今日は疲れちゃったから、休もうかな」
「わたしも疲れましたぁ……! 休みたいですー!」
「俺もだ。少し……寝転がりたい」
イダトを相手にしたのは久々だったから、肉体的にも精神的にも疲れた。
アンナたちがいるから満足には寝られないだろうけど……ベッドに寝転がりたい気分だ。
色々と思うこともあるが、ともあれ……今は自由になったことを喜ぼう。
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