69.覚えていろよ
「リッター……! はは……! お前にさ、最後のチャンスをやろうと思うんだ……!」
イダトはにやにやしながら、俺の肩を揺らす。
どこか懇願するような表情を浮かべて、呟く。
「僕の家に……戻らないか……! 今なら父上にも良い感じに言ってやるからさ……! な……? な……?」
どうやらまだ俺に、家へと戻るように言っているようだ。
一体今更どういった理由で言ってきているのか。
どうして、イダトはこんなに必死なのか。
アルタール伯爵がギルドに帰還するように伝えたレベルだから、恐らくイダトは何か言われているのだろう。
だけど。
今更、イダトにどんな事情があっても俺には関係ない。
もうアルタール家の人間ではないし、向こうから俺を追い出したんだ。
「さっきも言っただろ。俺は戻らない。イダトにどんな事情があろうと、俺は絶対に帰らない」
イダトの腕を掴み、払いのける。
すると、イダトは顔を真っ赤にしてみせて唇を噛んだ。
「……なんでだよっ! お前さぁ――」
「いい加減にしろ。あまり強くは言いたくないが、お前は負けたんだ。これ以上俺にどうしようって言うんだ?」
「……それは」
「帰れ。これ以上は俺も嫌なんだ。帰ってくれ」
「帰りなさい。ここにあなたの居場所はないわ」
「見てください、周囲の皆さんを。あなたのことを冷ややかな目で見ていますよ」
そう言われ、イダトは周囲を見る。
いつの間にか、訓練場にも冒険者が集まっていたようだ。
「あ、ああっ……ああっ……! 見るなァ……! 僕……そんな目で見るなァ……!」
手を震わせながら頬に当て、目を見開いて周囲に叫ぶ。
だけど、誰もイダトのことを心配しない。
ただただ、冷たく見据える。
「たっく」
一人の冒険者が痺れを切らしたのか、声を上げた。
「かーえーれ! かーえーれ!」
すると、こだまするように他の冒険者たちもが声を上げ始めた。
「「「かーえーれ! かーえーれ! かーえーれ!」」」
五月雨のように降り注ぐ帰れコール。
次第に声も大きくなっていき、誰もがイダトのことを敵だと認識した。
「っ……リッタ-……!」
声を震わせながら、イダトがこちらを睨めつけてくる。
「絶対……お前は殺す……覚えていろよ……! お前だけは……絶対に殺してやる……!」
「その時は全力で抵抗してやるよ」
「……っ」
イダトは舌打ちをして、急ぎ足で訓練場から出て行く。
俺は彼の姿が見えなくなるまで眺めた後、大きく息を吐いた。
「やっと出て行ってくれたか……」
【夜分からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が夜分の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!




