66.完璧だよなぁ!
「ちっ、貧乏くさい訓練場だな。こんなところで活動している冒険者が可哀想だ」
イダトは舌打ちをしながら、訓練場を闊歩する。
ちらりと視界を巡らせて、鼻で笑って見せた。
「リッターさぁ! こんなところで冒険者やっていて、恥ずかしくないわけ? ええ?」
「今のお前よりかは恥ずかしくない」
「……ムカつくなぁ! お前って、僕に反抗していいと思っているわけぇ!?」
そう言って、再びイダトが俺の胸ぐらを掴んでくる。
懐かしいなぁ……小さい頃、この脅しにすごくビビっていたっけ。
そりゃ相手は《剣聖》だからな。
少しでも反抗すれば、いつだって俺のことを殺せるんだから。
「脅ししかしないのな」
「……なんだよっ! たっく気分が乗らねえ!」
イダトは近くにあった石を蹴り、不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「リッター。本当に戦うの?」
「わたしたちは絶対にリッター様は大丈夫だって信じていますが……少し心配です」
アンナたちが不安そうな顔で俺のことを見てくる。
だが、当然である。
今からやるのは喧嘩だ。
それも、《剣聖》との喧嘩だ。
下手をすれば、俺は死ぬかもしれない。
だけど……覚悟はできている。
俺は勝つ。
まあ、断言なんて恐ろしくてできないけどさ。
「女と仲間ねぇ。良いご身分だこったリッターよ」
「ああ。お前よりかはマシな身分ではあるつもりだよ」
俺が煽ると、イダトがくつくつと笑う。
「……いいぜ。もういい。決めた」
そう言いながら、イダトが腰に下げている剣を引き抜く。
「父上からお前を連れ戻せって言われてるけどさぁ……ここで殺しちゃって、僕の方がやっぱり優れていたって証明したら……完璧だよなぁ!」
ははは……こいつ、俺を殺すつもりでいるらしい。
さすがに……怖いな。
俺を本気で殺しに来るのか。
「ふぅ……分かった。なら、俺も全力でお前を撃退する。お尻ぺんぺんしてアルタール伯爵の下に帰してやるよ」
【夜分からのお願いです】
・面白い!
・続きが読みたい!
・更新応援してる!
と、少しでも思ってくださった方は、
【広告下の☆☆☆☆☆をタップして★★★★★にしていただけると嬉しいです!】
皆様の応援が夜分の原動力になります!
何卒よろしくお願いします!




