57.有能であって万能ではない
頭が痛い。
体も重いし、まだふらふらとする。
思考もままならない。
「だ――いじょ――リッ――」
どこからか声が聞こえる。
誰だろう……。
それに俺は何をしていたんだっけ……。
「リ――ッ――リッター!!」
そうだ、俺は魔法を記憶して……!
「頭いったー……ここどこだぁ?」
目が覚めると、どこかのベッドに倒れていた。
俺は未だふわふわとしている頭を回しながら、周囲を見る。
「本当に心配したんだよ! もう!」
「びっくりしましたよ!」
「うおお!?」
ここがどこだか判断する前に、突然二人が抱きついてきた。
ぐっと顔を俺の体に埋めて、何度も名前を呼んでくる。
いきなりだったもので、俺の心臓は早鐘を打っていた。
「お、俺は大丈夫だから……! な!?」
「ぐすっ……うん……」
「信じますからね……?」
そう言って、二人が俺から離れてくれる。
もしかして……泣いているのか?
俺のために……泣いてくれているのか。
「本当に死んじゃったのかと思ったよ……! びっくりしたんだから……!」
「そうですよ……! 突然倒れたんですから……!」
「ごめんごめん……でも、そうか」
少し頭が回り始めてきた。
恐らくだが、倒れた原因は《ショートカットコマンド》が原因だろう。
あれほど一気に魔法を覚えたのは、今回が初めてだ。
しかも覚えた魔法はどれも最上位のもの。
ともなれば、自分の限界を一気に超えたことによる反動で倒れたのだろう。
俺のスキルは有能ではあるが、万能ではないということだ。
「ちなみに、ここはどこなんだ?」
「ここは宮廷内の医務室よ。倒れたのが宮廷だったから、まだよかったわ」
「これが外だったら大変なことになっていたかもな……」
俺は少し安心しながら、ベッドから立ち上がる。
「ちょ……大丈夫なのですか!?」
「大丈夫だよ。多分、魔法を無理して覚えすぎただけだから」
そう言ってグットサインを送ると、エレアが苦笑する。
「確かに元気そうですね。安心しました」
「ごめんな。心配かけちゃって」
これからは魔法の覚えすぎには気をつけよう。
ところで。
「よし。早速覚えてみた魔法を試してみたいだけど、いいかな?」
「本当に大丈夫なの……? でもリッターのことだから大丈夫そうだね」
アンナは嘆息しながら、椅子から立ち上がる。
「ギルドに行って試してみよっか。私たちもリッターの魔法、見てみたいしね」
エイラも立ち上がり、俺たちはギルドに向かうことにした。




