55.《絶対零度》の記憶
「ええと……魔導書は……」
「広すぎて分かりませんね……」
俺たちはクソ広い宮廷図書館の中をさまよっていた。
「やっぱり司書さんに聞いた方がよかったんじゃないのか?」
「いーや。それじゃあ面白くないじゃない」
「お宝は己で探してこそ……ですよ……!」
「全く……よく分からんこだわりだな……」
嘆息しながら、俺は顔を上げる。
このコーナーは魔法歴史か。
グループ的に言えば近いとは思うから、どっかにあると思うんだけど。
「あ、あれじゃないか? 魔導書って書いてるぞ」
「あったー! お宝ゲットだね」
「ふふふ……! ありました……!」
二人は半ばテンションが高い状態で、魔導書のコーナーに走って行く。
走るのもあまり良いことではないが、近くに人もいないから別に構わないだろう。
俺も彼女たちの背中を追いかけ、魔導書が並んでいるところに入った。
「すげーなこれ。全部魔導書か」
「やっぱり宮廷図書館は違うね。こんなにも魔導書が並んでいるの、初めて見たわ」
「しかも全部読み放題ですよ! タダ……! 最&高じゃないですかぁ……!」
「エイラ。お前なんか限界オタクみたいになってるな」
「限界オタクって言葉がよく分からないですが、多分そうです……!」
まあでもそれもそうか。
なんたってエイラは魔法使いである。
大量の魔導書を前にしたら、そりゃ興奮するのも当然だと言える。
エイラは魔導書を手に取って、パラパラとページをめくっていく。
「むむむ……難しすぎてよく分かりませんね……なにこれぇ」
「やっぱり高度なものなの?」
アンナがエイラが読んでいる魔導書を覗き込む。
「すっごく高度です……わたし、こう見えて勉強はできる方なんですけど……それでも意味が分かりません」
エイラでも分からないものなのか。
やっぱり宮廷に保存されている書物は一般のものとは違うんだな。
俺は近くにあった魔導書を手に取り、中身を見てみる。
「これは《絶対零度》って魔法か。名前からしてブリザドの上位魔法かな」
「《絶対零度》……!?」
俺の呟きに、エイラが驚きを呈する。
何かおかしなことでも言っただろうか。
「それって上位魔法どころじゃないですよ!? 氷属性の魔法の中では最上位です!」
「ヤバいなそれ。ええと、記憶できるかな」
さすがにそんな大層な魔法、俺のスキルで覚えることができるのだろうか。
「コマンドオープン」
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《絶対零度》を魔術書から記憶しました。
それに伴い《ブリザド》を消去しました。
あなたが使用できるショートカットコマンド一覧
・《ヒール》
・《ファイア》
・《イカズチ》
・《スラッシュ》
・《聖者の剣》
・《絶対零度》NEW!
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「覚えられたわ」
「えええ!?」
「ほ、本当!?」
俺の一言に、二人が叫んだ。




