46.ゴーレム
「この奥ね。二人とも全力で頼むわよ」
俺たちは壁に背中を預け、恐らくこの先にいるであろう何かを警戒する。
「もちろんだ。緊張はするが、全力でやらせてもらう」
「任せてください! リッター様がいれば問題ありません!」
「だからなぁ……」
俺は苦笑しながら、息を整える。
問題の魔物はすぐ目の前だ。
「……なんだこの音」
「確かに。何か聞こえるわね」
「石……でしょうか?」
何か石が擦れるような音が聞こえる。
最初こそ些細な音だったのだが、次第に大きくなってきたようだ。
「こっちに向かってきている! いったん離れるぞ!」
俺は慌てて声を出し、音がした反対の方向に回避行動を取る。
かなりの速度だった。
一体相手は何者なのだと、音がした方を見る。
「あれは……ゴーレムですね。石が擦れる音の正体はあれでしょう」
「ゴーレムか。初めて見た」
目の前には体が石でできた巨大な魔物がいた。
名前だけは聞いたことがある。
見た目の通り、石でできた怪物だったか。
しかし洞窟内でゴーレムだなんて、まあお似合いなこった。
「ゴーレムの討伐ランクはA程度って言われてる。でもゴーレム自体かなりレアな魔物だから情報が少ないわね……」
レアな魔物か。
そりゃこんな魔物がいれば、ルビーのお願いが断られたって仕方がない。
下手すれば平気で死ねるからな。
「どうしてこんなレアな魔物がここに……って討伐してから考えるか!」
「そうね! せっかくだから国王様から貰った魔法を試してみてよ!」
「いいですね! 見てみたいです!」
「いいぜ。俺の新たな力、試そうじゃないか!」
そう言って、俺は相手のゴーレムを見据える。
見てろよゴーレム。
俺の新技を試してやる。
「《聖者の剣》」
俺が口ずさむと、巨大な魔法陣が手元に生成される。
魔法陣に手を突っ込み、中から美しい剣を引き抜いた。
何回見たって、この剣から感じるオーラには慣れないものだ。
「ゴーレムさんよぉ! 勝負だ!」
俺の声と同時に、ゴーレムが動きだす。
「っ!」
やはりかなりの速度だった。
咄嗟に回避行動を取るが、少しでも動きが遅かったら体ごと持って行かれていた。
あんなにも巨大なのに、よくもまあこんな速度が出せるものだ。
俺は地面に着地し、相手を見る。
やっぱり剣を持ちながら戦うのって難しいな。
これだけはイダトやアルタール伯爵を尊敬してしまう。
「はは……やっぱ強いな。でも次は俺の番だ」
俺は息を整え、剣を構える。
ゴーレムの動きに体を合わせろ。
こちらから攻撃をするんじゃない。
相手の攻撃にカウンターをする形で剣を打つんだ。
「――ここだ!」
ゴーレムが腕を使いこちらに仕掛けてきた瞬間、俺は剣でカウンターを仕掛けた。
瞬間、相手の腕がいとも簡単に破壊された。
「……マジか」
俺は思わず、そんな声が漏れてしまう。




