42.よろしくぅ!
「実はどうしても欲しい素材があるんだよね! もちろんアンナちゃんたちに頼む前に専門の業者に頼んだよ! だけどぉ~……」
そう言いながら、ルビーさんはがっかりした表情を見せる。
「なんか厄介な魔物がいるとかなんとかで断られちゃってさ~! でもでも……その素材がどうしても欲しいんだよねぇ」
「ルビーさんが欲しい素材ってのはどういうものなんだ?」
「よくぞ聞いてくれました! リッター殿はいいセンスをしているねぇ! 褒美としてあたしのことをルビーちゃんと呼んでもよいぞ!」
「ルビーでいいか」
「恥ずかしがりめ! 仕方ないから呼び捨てでも良いぞ!」
ルビーは満足そうに笑う。
というか、この人は本当に元気だな。
いつも死にかけな俺と違って、また別の種族のように感じる。
少しだけ羨ましい。
「素材っていうのが、ミスリルっていう金属なの。すっごく貴重で激カワな代物なんだけどぉ~!」
「ミスリルって本当に貴重な金属じゃない! 業者に依頼するの高かったんじゃない?」
「本当に高かったよ!! だけど手に入らなかったって報告があった上にお金だけ持って行かれちゃって……とほほ。あたしはすっごく心とお財布が悲しいの……」
あまりファンタジー系のゲームをしない俺でも、ミスリルという金属に聞き覚えはあった。
確か相当軽くて硬い金属なんだっけか。
しかしここの武具屋は色々と取りそろえているんだな。
「だからだから! アンナちゃんたちなら厄介な魔物もワンパンしてミスリルもささってゲットしちゃうでしょ!? なのでお願いしたいと言いますか~!」
どうやらそういう理由で俺たちにお願いをしているらしい。
まあ断る理由なんてないが、しかし厄介な魔物か。
これほど貴重な金属の前に立ちはだかる魔物って考えると……かなり手強いような気がする。
「わたしはいいですよ! なんたってリッター様がいますし!」
「そうね。リッターがいるから私も構わないわ」
「え……!? 待ってくれ!? 俺に期待しすぎじゃないのか!?」
俺は慌てて首を振る。
だがもう遅かったらしい。
「ほほう! リッター殿ってそんなにすごいのか! よーし頼んだぞ盟友!」
「はぁ!? マジかよ……」
ため息を吐くと、アンナが耳打ちをしてきた。
「ほら。もしかしたら魔人族とも関係があるかもしれないじゃん」
「……まあ確かにそうかもだけど」
仕方がない。
二人がいいって言うなら構わないか。
俺は渋々頷く。
「さすがっ! あたしは三人のこと信用していたよ! それじゃ~頼んだ! 場所は王都西にあるベガ山脈だよ! よろしくぅ!」
想像通りではあるが、やっぱり山の中なのか。
山ってことは数多くの魔物がいそうだが……。
仕方がない。
覚悟を決める他ないだろう。




