41.頼み事
「してして! 今日は何用かな!?」
「何か良い感じの装備がないかなって見に来たんだよ! オススメか何かあるかな?」
「ほほう! 装備を見に来たんだね! ふふふ、とってもいいものあるよー!」
そう言ってルビーさんは店の奥へと走って行く。
どうやら表には出していないものらしい。
アンナたちとルビーさんは友達っぽいから、彼女たちだけの特別製でも用意しているのだろう。
なんだかいいなそれ。
俺も仲良くなって個人的に武器とか用意してもらいたい。
別に変な意味ではない。
「これとかどうかね! くまちゃんのぬいぐるみが付いてる剣! んでんでこっちはイルカのぬいぐるみが付いた杖! 可愛いでしょ!」
ルビーさんが持ってきた武器は……なんていうか、またキラキラとしたものだった。
あんなにも可愛いが詰め込まれた武器は初めて見た。
いや……見覚えがないわけではない。
日曜朝にやっていた魔法少女系アニメでよく見た。
「可愛いじゃん! これにしよっかな!」
「わたしもこれにしましょうか! イルカが可愛いですし、先っぽに飾られているハートがとってもキュートです!」
「待て待て待て! さすがにこれは……可愛すぎないか?」
俺は慌てて止めに入る。
確かに可愛いのはいいことだと思う。
そりゃ女の子だから可愛いものを楽しむのが一番だ。
だけどだな……二人はSランク冒険者なわけだ。
すごい冒険者が……魔法少女的なキラキラファンタジーな装備を身につけていたらちょっとあれである。
ダメとは言わない。だけどイメージ的な問題だ。
「まあ確かに可愛すぎるかも……いつもの感じの落ち着いたものにしようかな!」
「うーん……そうですね! あ、でも個人的にイルカのぬいぐるみはください!」
「くぅ~っ! かわいすぎちゃったか! あたしのセンスが良すぎたかぁ~!」
とりあえずルビーさんがこういうタイプで良かった。
もし俺の一言で傷つかれていたら焼き土下座案件だった。
ありがとう意外とあっさりしていて。
「ならなら! これはどうかね? 可愛くはないけど性能はピカイチ! 剣には攻撃系のバフが多く付与していて、杖には魔力補助系のバフがめちゃくちゃ付いてる!」
「すごいなそれ。俺はあんまり知らないんだけど、武器にバフを永続的に付与するってヤバい技術なんじゃないのか?」
「ふふん! お目が高いね!」
俺自身あまり武器に詳しくはないが、武器単体に永続的にバフが付与されているものなんて見たことがない。
確かイダト兄さんが昔欲しがってアルタール伯爵にねだっていたが、技術的に手に入るのが難しいからって断られていたはずだ。
そんな大層なものがここで出てくるとは思いもしなかった。
「あたしってば天才だからこんなことできるんだよ! えっへん! やっぱりあたしって可愛い!」
どうして可愛いに行き着くかは分からないが、技術力は本物らしい。
俺は半ば感心しながら武器を眺める。
「それじゃあこれにするよ! ありがとう!」
「ありがとうございます!」
「いいのだよいいのだよ! これがあたしの仕事だからね! でも~……」
そう言いながら、ルビーの声がワントーン下がる。
何か意味ありげだ。
「その武器……タダであげるから……少し頼み事を聞いてくれない?」
「ええ!? どうしたの!?」」
「何かあったのです?」
俺たちが半ば心配しながら尋ねると、ルビーさんは悲しげに語った。




