36.働いた後には
「んあ~……緊張したぁ! 本当に国王様と話すことができるなんて驚きだよ!」
「ですです! これも全てリッター様のおかげですよ!」
「違うさ。二人の力があったからこそ、国王様に直接会うことができたんだよ」
宮廷から出た俺たちは、のんびり帰路についていた。
二人は謙虚だからこういう風に言うが、結局はアンナたちの実力があったからこそである。
俺なんて別に多少貢献したかしてないかくらいだ。
「しっかし疲れたなぁ。色々あるが、今は休めるうちに休みたいところだ」
「ふふふ……そう言うと思っていたわ!」
「ええ! わたしたちには抜かりありません!」
「なんだなんだ? 何かあるのか?」
二人がふふふと笑うので、俺は首を傾げてしまう。
一体何を俺に隠しているって言うのだ。
「これはなんだと思います?」
そう言って、エイラが麻袋を取り出す。
「麻袋……だな。中にはお金が入っているのか?」
「ええ。ここ最近の依頼達成料が中に入っているわ」
「すげえ貯まったな。俺たちだいぶ働いたってことか」
「その通り。私たちはだいぶ働きました」
二人はくつくつと笑いながら、俺に迫ってくる。
なんだなんだ。
一体何を隠しているんだ。
俺は固唾を飲み込み、二人が発言するのを待つ。
「というわけで、貯まったお金で温泉にでも……ってね。良い案でしょ?」
「少しは休憩したいですしね。ちょっとしたご褒美です」
「温泉……! マジか! 俺好きなんだよな温泉!」
前世では何もかも忘れたい時は、よく一人で温泉に行っていた。
あれ、本当に疲れた時には沁みるんだよな。
いや~……温泉に行けるならぜひ行きたい。
ひとっ風呂浴びてすっきりしたいところだ。
「全員賛成ってことね。それじゃあ温泉に行きましょうか!」
「行きましょう行きましょう! レッツパラダイス!」
「レッツパラダイス! 温泉へゴーだ!」
俺たちは拳を掲げ、城下町を歩き始めた。
どうやら温泉は王都にもあるらしい。
多くの人々が行き交う中を歩きながら、温泉へと向かう。
「王都……と言っても、外れの方にあるんだけどね。でもでも森が近いからすっごく雰囲気はいいんだ!」
「つまり自然たっぷりってことか……! こんな都会で自然を楽しめるってのは貴重だな!」
「美味しいご飯もあるっぽいですよ!」
「マジか! それは楽しみだぜ!」
途中馬車に乗りながら、のんびり進んでいると。
「ここね!」
「おお! ここか!」
気がつく頃には大きな建物の前にいた。
なんだかすごく和風な建物だ。
「東洋の雰囲気を出した貴重な場所らしいですよ!」
「ふむふむ。それはいいな!」
なんだか故郷に帰ってきたような感じがする。
「それじゃ――入ろうか!」
「おう!」
「はーい!」
そう言って、俺たちは建物の中に入っていった。




