35.出世したものだ
《聖者の剣》ってのがどんなスキルか分からないが、とりあえず発動してみるか。
俺は目の前に手を突き出し。
「《聖者の剣》」
そう言うと、魔法陣が展開される。
俺の手に魔法陣が重なったかと思うと、手には剣が握られていた。
「なんだこれ……剣が出てきた……」
困惑していると、国王様は驚きながら答える。
「これが《聖者の剣》の能力だ。強力な剣を魔法陣から取り出すことができる。その剣は一振りすれば、簡単に地割れをも引き起こすレベルの代物だ」
「なんだそれ……」
「す、すごいよ! 伝説級の魔法じゃん!」
「やばすぎます! さすがリッター様!」
俺は半ば動揺していると、国王様が拍手をした。
「感動した。またお主には魔導書も渡そうと思う。有効活用してくれ」
「は……! ありがとうございます……!」
恐縮しながらも、頭を下げる。
「して、魔人族の話に戻るが。一体何が起きたんだ?」
「それですね。実はキメラの討伐依頼を受けた際に、アグという魔人族と接敵しまして」
アンナが一歩前に出て、国王様に説明を始める。
少し緊張しているようにも見えるが、だいぶ慣れてきたようだ。
「多分……かなりの役職を持っている人物だと思います。そんな人物がこんなところに現れたってことは……恐らく本格的に私たちを攻撃しようと動き出していると考えてもおかしくはないかと」
「ふむ……そうか。なるほどな」
国王様はむむむと唸る。
改めて話を聞いたが、恐らく魔人族は本格的に動き出していると考えてもおかしくはない。
どのような攻撃手段を持っているか……が未知数だから怖いところではあるのだけれど。
「分かった。お主たちには継続的に魔人族の警戒に当たってほしいのだが、頼めるか」
「もちろんです! 国王様から直々にお願いされるなんて、すごく光栄です!」
「はい! わたしたちに任せてください!」
「俺たちならできます!」
あまり断言するような言葉は苦手なのだが、今はするべきだろう。
彼女たちの目標のためにも、ここは頑張らねば。
「うむ。お主たちには期待しておる。これから数多くの成果を残せば、我々からも褒美を用意しないとな」
「褒美……!」
「ですってアンナさん……!」
褒美という言葉に、二人は目を輝かせる。
やはり色々と期待してしまうよな。
でも少しは期待してもいいと思う。
俺らから提案するってこともできるだろうし。
「また何かあればすぐに連絡してほしい。宮廷の出入りは自由にしてくれて構わないし、そこまでのものならギルドに連絡してくれれば私に直接届く」
「はい! もちろんです!」
俺たちは敬礼をし、頭を下げる。
ははは……俺たちもめちゃくちゃ出世したものだ。




