34.《聖者の剣》の記憶
「レッドル公爵から話は聞いておる。お主たちが魔人族と遭遇したことはな」
そう言いながら、国王様は静かに頷く。
ゆっくりとこちらに顔を向けてきたかと思うと、俺の名前を呼んだ。
「ところでリッターよ。お主の活躍も多く聞いている。デルタ・ドラゴンを討伐し、さらには数多くの高ランクの魔物を倒してきたと」
「で、でるたどらごん? なんだろう……」
俺が首を傾げていると、アンナが耳打ちをしてくる。
「あれだよ……! 私と最初に出会った時に倒した魔物……!」
「ああ! あのトカゲみたいなやつか!」
「ほほう。お主はドラゴンをトカゲのようなものというのか」
国王様は朗らかに笑う。
やべ……国王様の前で変なこと言っちゃったかな。
なんかあったら極刑もありえるから下手なことは言わないよう気をつけないと……!
「構わん構わん。して矢継ぎ早に質問をして悪いが、お主は無詠唱で……更に短期間で魔法取得し発動できると聞いたぞ。それは本当か?」
「は……はい! あまり大層なものではありませんが……一応できます……!」
「大層なものではないか。しかし無詠唱で魔法を発動できた人間は過去に、賢者クラスしかいないものだが」
え……? そうなの?
無詠唱で発動するってそんなにすごいことなのか?
「そこで一つ試したいことがある。おい、魔導書を持ってきてくれるか」
「はっ!」
国王は近くにいた兵士に指示を送る。
少し待っていると、やけに絢爛な魔導書が持ってこられた。
国王は内容を確認した後、俺に手渡ししてくる。
「この魔導書は《聖者の剣》という名の魔法が記されたものだ。過去に扱えた人間は賢者クラスのものしかいない」
「え、ええと。そんな魔導書をどうして?」
「お主の噂が本当か試したいのだ。覚えてみろ」
俺が……こんなすごい魔法を覚えろって……?
俺にできるのか?
でも……空気的に試さないとダメだよな。
やってみるか。
魔導書をめくり、中身を記憶する。
俺にとって、魔法を取得するのは難しいことではない。
魔導書を最後のページまでめくり、そっと閉じた。
「コマンドオープン」
――――――――――――――――――――――
《聖者の剣》を魔術書から記憶しました。
あなたが使用できるショートカットコマンド一覧
・《ヒール》
・《ブリザド》
・《ファイア》
・《イカズチ》
・《スラッシュ》
・《聖者の剣》NEW!
――――――――――――――――――――――
「記憶完了っと。これで扱えます」
「ほ、本当か……? 少し見せてくれぬか」
国王様の問いに、俺は頷いて魔法を発動することにした。




