31.お膝
第四章開始!
「国王様に私たち自ら報告……か……緊張するな」
「そうですね……めちゃくちゃ恐縮しちゃいます……」
俺たちは帰りの馬車に揺られながら、そんなことを呟いていた。
実際俺も緊張はしている。
なんたって国家のトップに説明をしなければならないのだ。
万が一何かあれば極刑だってありえるってことを考えると、震えが止まらない。
「でも、俺たちの目標に少し……というかかなり近づけるわけだ。逆にチャンスだと思おう」
「確かに……そうだよね。これはチャンスだ」
「うん……! ですね……!」
二人は拳をぎゅっと握り、にかっと笑う。
そう、これはチャンスなのだ。
俺たちにとっての目標を叶えるチャンスになりえる。
「にしても、眠いな」
俺はぐっと伸びをして、目をこすった。
それはそうと、ずっと俺は眠たかったのだ。
この依頼を受ける前から、眠たくて眠たくて何度倒れそうになったことか。
王都に到着するまで、少し寝ようかな。
「あ、それならわたしのお膝を貸してあげます!」
「え……? あれ本気だったのか?」
思わず困惑してしまった。
「本気ですよ! 約束だったじゃないですか!」
ま、マジか。
俺……女の子のお膝で寝られるのか……?
「ふん! 勝手にすればいいじゃない! 約束してたんでしょ!」
「アンナはなんで怒ってるんだよ」
「別に怒ってません! どうぞお膝で眠ってください! 永遠に!」
やっぱ怒っているよな。
俺、何かしたかな?
というか永遠にって殺意高いなおい。
「だそうですよ! さあ寝ちゃってください!」
「あ、ああ」
しかしこんなご褒美シチュを見逃すほど俺は甘くはない。
アンナがなんか怒っているが、それでも構わない。
俺は前世では絶対に体験できなかった膝枕を今――やってみせる。
ゆっくりとエイラの膝に体重を乗せる。
ああ~……柔らけえ……なんて最高なんだ。
俺は涙を流しそうになりながら、エイラのお膝を堪能する。
「えへへ。なんだか可愛いですね」
「可愛くないわよ! ふん!」
可愛いって言われたんだけど。
なんかアンナはぶち切れてるけど。
でも可愛いって……照れくさいな。
あ~……この時間が永遠に続けば良いのに。
生きてて良かった。
まあ一回死んでるけど。
「王都までもうすぐでちゅよ~」
エイラの甘やかしボイスに俺は静かに頷く。
若干赤ちゃんプレイになってきたような気がしなくもないが、どちらにせよ癒やしなので問題ない。
最高である。
「全く……今度は私がやるから」
……? なんかアンナが言ったような気がするけど聞き取れなかったな。
まあいいや。今の時間を楽しむことにしよう。
眠たいし。




