30.現実(イダト視点)
第三章完結!
「僕の《剣聖》は最強だ! 今すぐにお前をぶっ殺してやる!」
イダトは叫び、レッドドラゴンにこちらを向かせる。
ドラゴンはイダトをじっと見た後、すぐに敵だと理解して更に咆哮を上げた。
「ははは!! テンション上がるなぁ!!」
イダトは剣を引き抜き、にやりと笑う。
一瞬で勝負はつけてやる。
自分の実力があれば、ドラゴンくらい秒だ。
なんて……思っていた。
「《剣聖》発動ッッッ!」
《剣聖》というスキルが持つ能力というのは。
――――――――
《攻撃力上昇》
《身体能力上昇》
《剣技上昇》
《見切り》
――――――――
大方このようなものだ。
やはり当たりスキルということもあって、色々と豪華なものである。
だが――イダトに限って言えばこれだけしか持っていない。
普通の人間ならばスキル以外にも努力をし、魔法を手に入れる。
しかしイダトはとことん怠けたため、これだけしか持っていないのだ。
ろくに実戦経験もない。
そんな人間がドラゴンに挑むと。
「くらえ――っな!?」
イダトの剣技は簡単にレッドドラゴンに読まれ、逆に攻撃を喰らうことになった。
《見切り》の能力でどうにか回避しようとするが、しかしながらイダトは回避することができなかった。
それもそうで、彼の能力は一切育っていない。
レベルで言うならたったの『1』だ。
相手に弾き飛ばされ、近くにあった木々に体を強くぶつける。
「うぐっ……!! いてぇぇぇぇぇ!!??」
イダトはぶつけた体の痛みに悶えながら、どうにか相手を見据える。
レッドドラゴンはこちらをにらみ、今すぐにでも殺す準備はできているようだった。
や、やばいかもしれない。
「クソ……! 僕が負けるわけがないだろう!! 次だ次!」
イダトは反省もせず、もう一度攻撃を相手に与えようとする。
だが、案の定かわされて逆に攻撃を喰らう。
「うぐっ!?」
ドラゴンのなぎ払いをもろに喰らってしまい、イダトの足からは血が流れた。
「や、やばい……やばいやばいやばい!」
脳内はパニックになる。
このままじゃ自分は死んでしまう。
だけど――ここで逃げるのか?
逃げてしまったら大恥だ。
あれほど偉そうにしていたのに、負けて帰ってきたら召使いたちには舐められる。
それに父上からも叱責されてしまうかもしれない。
嫌な考えが大きくイダトの脳内に過ってしまう。
「だ、だけど逃げなきゃヤバい!!」
イダトは泣きそうになりながら、ドラゴンに背を向けて走った。
レッドドラゴンは相手が弱者だとすぐに分かったのか、見向きもせずにイダトを逃した。
……この時点で、イダトはリッターよりも格下だと自分で証明してしまったのだ。
「最悪だ……最悪だ……! この僕が……!」
しかし、どんなに悔しがっても事実は変わらない。
今のイダトには子供のようによしよしとして甘やかしてくれる人間なんて誰もいないのだ。
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