3.追放処分
「ははは! まさか父上がお前を追放処分するなんてな! 父上、いい判断です!」
……マジか。俺、追い出されるのか。
まあこの家にいても色々とできないことも多かったし、別にいいのか?
だけどイダト兄さんは相変わらずムカつく。
いいよな勝ち組は楽そうで。
「分かりました、追放処分は受け入れます。……俺はもう自由ってことでいいんですよね?」
「ふん。確かに自由だが、お前のような無能が生き残れるとは思えんがな」
「そうだそうだ! 無能のリッターはどうせそこら辺で死ぬだろうな!」
……俺はどうやらそこら辺で死ぬって思われているらしい。
まあ俺が持つスキルはこの世界では外れなんだ。
当たり前と言えば当たり前だけど。
「……もういいですね。俺は出て行きます」
だけど、追放されたことによって俺は誰にも邪魔されることなく自由に魔術書を触れるようになるはずだ。
外れスキル認定された俺が生き残る方法は、頑張って力を付ける他ない。
「ははははは!! 無様だなリッター!!」
「ふん。貴様は最後の最後まで力不足だったな」
イダト兄さん――いや、もう兄さんじゃないか。
イダトとアルタール伯爵は俺のことをゴミのような目で見てくる。
だが気にしてばかりじゃ滅入るだけだ。
俺は彼らを無視して、家を出て行くことにする。
一人で生きていくってのは大変だけど、頑張れば意外となんとかなるかもしれないし。
「とりあえず町に行かないとな……だけどアルタール伯爵家付近の町は嫌だから遠くの方へいかないと」
さすがにアルタール伯爵が治めている領地の首都なんかには行けない。
だからある程度離れた場所に移動しなければならないわけだけど。
俺は草原を歩きながら、大きく息を吐く。
「どこだろう。ここ」
早速迷っていた。
あまりこの世界の土地勘があるわけではない。
自分がどこにいるのか、どの町に向かえばいいのかなんて未知だ。
「誰かに聞く……と言っても人がいないしな」
なんせここは草原なのだ。
町や村ではないのだから、当然人なんていない。
とりあえず歩きながらたまたま人間と出会うことを祈るしかないか。
「……あれ? なんだ?」
歩いていると、ふと悲鳴のような声が聞こえてきた。
顔を上げてみると、魔物に襲われている少女の姿が見えた。
魔物をあまり知らないから名前とかは分からないんだけど、なんか大きいトカゲみたいだ。
「た、助けて! 誰か!」
なんでこんなところに一人で少女がいるのかとも思ったが、今はそれどころではない。
とにかく彼女を助けないと!
実戦経験がないからどうなるかは未知数だが、ここで俺が逃げたら彼女は大変なことになる。
「手を貸します! ちょっと待っていてください!」
そう言って、俺は彼女の前に飛び出した。