28.報告
「素晴らしい成果を上げてくれた! 改めて感謝をしたい!」
レッドル公爵邸に戻ると、彼は満足そうに大きく手を叩いた。
近くにいた兵士たちも拍手をしている。
なんだか少し照れくさいな。
「当然のことです。まあ……全部リッターのおかげですがね」
「ですです! リッター様のおかげです!」
「おいおい……俺をあまり持ち上げるなって……」
俺は慌てて二人を止めに入るが、レッドル公爵は笑うのみである。
全く……俺は何度も言うが外れスキル持ちなんだ。
転生した瞬間に親から見放され、虐げられてきた。
二人は俺がすごいって言うけど、俺が多少すごく見えているのは全部二人のおかげなんだ。
俺は別にすごくなんてない。
「リッターさんよ! 君は謙虚でいいな! 私はすごく気に入ったぞ!」
「ははは……嬉しい限りです」
「しっかりアルタール伯爵には言っておくからな!」
「ははは……」
アルタール伯爵に言うって、一体何を言うのだろうか。
別に言ったところで、あの息子はゴミだったとレッドル公爵にも共有されるだけだと思うが。
まあ別に、前の親に何を言われようが関係ないか。
今はもう縁を切られているわけだし、気にしても仕方がない。
「あの、ところでなのですが」
「どうしたアンナさん?」
アンナが恐縮しながらも、レッドル公爵に話しかける。
「キメラの討伐後、魔人族の一人と出会いました。名をアグと名乗っていたのですが……ご存じだったりしますか?」
「魔人族が現れたのか……? アグ……聞いたことがないな。そもそも魔人族の名前なんて人間側には回ってこないものだ」
「そうですよね……私も魔人族が名を名乗るなんて初めて見ました」
「しかし名乗るということは、それ相応の役職を持っているのかもしれない。これは国王様に報告せねばならないな」
そう言って、レッドル公爵は唸る。
「申し訳ないが、国王様には君たちが報告してくれないか。私の伝聞より、直接見た君たちの方がいいだろう」
「え、ええ!? 国王様に直接……ですか!?」
「わたしたちが構わないのです!?」
「構わんさ。私から直接言っておこう。リッターさんにも頼めるか?」
レッドル公爵が俺の方を覗いてくる。
直接……国王様にか。
少しばかり緊張するが、とはいえこれは彼女たちの目標にも繋がってくるのではないだろうか。
国王様と直接繋がりを持っておいて、損はないだろう。
「分かりました。アンナたちもいいよな?」
「う……うん……ちょっと緊張するけどね」
「は、はいです!」
「良い返事だ! それでは、お三方には任せるぞ!」
どうやら俺たちは、直接国王様に会うことになってしまったらしい。




