23.レッドル公爵
「だいぶ栄えてんなぁ。やっぱ公爵領ってのはすげえや」
俺はレッドル公爵領の町を歩きながら、そんなことを呟いた。
伯爵領は嫌というほど見てきてが、やっぱり比較したらだいぶ違う。
人間の量も、建物の密度や高さも。
「ええと、レッドル公爵邸はこっちかしら」
アンナは先導しながら、公爵邸を探していた。
やはり広い分、道が分からないのだろう。
地図を見ながら、むむむと唸っていた。
「多分あそこじゃないです? 一際大きな家がありますよ」
「ああそこね! 門番もいるし間違いないわ!」
そう言って、俺たちは門番に事情を説明した後レッドル公爵邸の中に入ることに成功した。
うわ~すげえ。やっぱり貴族の家は違うな。
高そうな絵画や彫刻や諸々、普通の家には置いてそうにないものがたくさんある。
「こちらになります」
召使いが一礼し、レッドル公爵が控えているであろう部屋まで案内してくれた。
俺たちは自分たちの服を少し整えた後、静かに扉を叩く。
「おお! 来てくれたか! 入ってくれていいぞ!」
しばらく待っていると、中からそんな声が聞こえてきた。
こほんと咳払いをした後、俺たちはゆっくりと中へ入る。
「君たちはリッター御一行だな! 噂は聞いているよ!」
「え……?」
目の前には貴族服を身にまとった一人の男がいた。
ていうか待て待て待て。
今リッター御一行って言わなかったか?
どうしてアンナじゃなくて俺の名前が先に出てくる。
「君がリッターさんだな! いやー、会いたかったよ!」
「え、ええ?」
急に握手を求めてきたので、また困ってしまう。
どうして俺なんだ?
「ふふふ。やっぱりリッターの話は噂になっていますか?」
「ああ! オーガを倒したりドラゴンを倒したりと盛りだくさんだ!」
珍しく敬語を使っているアンナに不思議な気分になりつつも、彼女は聞く。
「突然現れ、嵐のように実績を作っているとな! 君のような才能溢れる人間が現れてこの国の未来は明るいものだ!」
「ははは……俺はそんな人間じゃないんですけどね……」
照れくさい気持ちになりながら、俺は答える。
っていうか、俺ごときが国の未来を保障できるなんて思えない。
俺はただの外れスキル持ちだ。
「……む。しかし君の顔はどこかで見たな。私の記憶が正しければ……アルタール伯爵の息子だったか?」
「ご存じだったんですね。まあ……俺はアルタール家から追放されたので、ただのリッターですよ」
そう言うと、レッドル公爵は驚きを見せる。
「家を追い出されたのか!? 才能溢れる君が!? 一体アルタール伯爵は何を考えているんだ!!」
言いながら、レッドル公爵は呟く。
「以前から馬鹿だとは思っていたがそこまでだったとは……国王様にも伝えなければならないな……まあいい! 仕事の話をしようじゃないか!」




