22.やっぱり天才だよね
「あれは……なんだ? 狼か?」
馬車から飛び降りると、三体の狼のような魔物がいた。
「シルバーウルフね。個体ランクはB。集団になって人間を襲うから、定期的に死者が出ているわ」
どうやら厄介そうな敵らしい。
俺はふうと息を吐いて、呼吸を整える。
アンナは剣を引き抜き、エイラは杖を構えた。
「やりましょう……精霊よ、我々に力の加護を与えよ《攻撃強化》っ!」
「ありがとうエイラ! 私たちも行くわよ!」
「ああ! 任せてくれ!」
エイラが加護を発動すると同時に、俺たちも動く。
「はぁぁぁ!」
アンナの一撃が一体のシルバーウルフに直撃する。
相手が怯んだのを見逃すことなく、彼女は追撃を繰り出し、一体の敵を殲滅。
しかし相手が魔物とはいえ知能がある。
仲間が倒されたのを察して、アンナめがけて一気に襲いかかってくる。
もちろん彼女は一人で対処できるだろう。
だけど……今は仲間の俺がいる。
俺が手助けしないと――!
「《スラッシュ》ッッッ!」
手のひらを相手に向け、魔法を発動する。
刹那、二体のシルバーウルフを俺の魔法が切り刻んだ。
反撃する間も与えず、相手は静かに倒れる。
「ナイスリッター! 助かったよ!」
「さすがです! やっぱり無詠唱は素晴らしいですね!」
俺がふうと息を吐こうとした瞬間、二人が抱きついてきた。
少し驚いてしまって、俺はわたわたしてしまう。
「別に俺はすごくないって。今回はみんながくれた魔導書がすごかったんだよ」
そう言うと、二人は大きく首を横に振る。
「その魔法……覚えようとするとかなりの時間が必要なんだよ?」
「わたしなんて覚えられてないんですよ!」
「うーん。でも俺はスキルが頑張ってくれたからなぁ。俺自身はすごくないよ」
「謙遜しすぎだよ! でもでも、本当に助かったからよし!」
「ありがとうございます! さぁーて、馬車に戻りますか!」
二人が手招きしてくるので、俺も彼女たちに倣って馬車に乗り込む。
御者さんが俺たちに感謝を伝えた後、再び馬車は動き始めた。
「しかし君は天才だよね。私なんてもう伸びしろなさそうなのに」
「ですです! 魔法を覚えれば覚えるほど、リッター様は強くなりますからね!」
「いやいや。俺なんて魔法を覚えなきゃ雑魚には変わりないよ。魔導書高いし……」
「ふふん。その辺りは私たちがフォローするから、あなたは無敵よ!」
「自信持ってください!」
ははは……自信を持ってか。
俺の性格的に、こういうの難しいからなぁ。
でも、そう言ってくれるだけで俺は嬉しい。
「自信持ってね! あ、そろそろかな……」
「見えてきましたね! レッドル公爵領の町が!」
「おおマジか」
そう言いながら、俺は小窓から顔を出した。
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