19.一緒におやすみ
「あまり広い部屋じゃないんだけどね~……えっと、とりあえずリッターは私の隣で寝てね」
「待て待て待て。ええ?」
アンナの一言に俺は困惑してしまう。
泊まる場所がないなら私たちに付いてきなよと言われてきたのだが……。
案内された場所はアンナとエイラの家だった。
「ええ~! リッター様は私の隣がいいですよね!」
「いやいやいや! そういう問題じゃないから!」
俺の想像では、どこか宿にでも泊まるのかなと思っていたのだけど。
まさか彼女たちの家に案内されるとは思わなかった。
しかも俺は女の子の家に上がったことがない超絶ピュア人間だ。
というか、今まで女の子に相手にされることなんてなかったから。
なのに突然転生したら女の子の部屋に上がり込むことになるなんて……。
「それじゃあ私とエイラでじゃんけんしよっか。勝った方がリッターを横に寝かすってことで」
「望むところです! 絶対に勝ちますよ!」
やはり……もしかしなくても転生って最高なのでは?
いや、でも俺は外れスキル持ちで虐げられてきたし、挙げ句の果てには家を追い出されたからな……。
ギリギリプラスマイナスゼロってところか。
「よっし! 私の勝ちね! エイラは孤独に寝なさい!」
「むむむむむ! 負けちゃったのです悔しい~!」
どうやら決着は付いたらしく、アンナがこちらに手招きしてくる。
「一緒に寝よ」
「あ、はい……」
もう俺は前世の陰キャぼっち男性を極まっていた。
おどおどしながらアンナの隣に立ち、緊張しながらこくりと頷く。
「なにそれ~もしかして緊張してるの?」
「いやっ! そういうわけじゃないんだ! まあ、あれだ! うん、やっぱり緊張してる……」
「ふふふ。仲間なんだから気にすることないのっ! さささ!」
「うわっ!」
そう言って、アンナに俺はベッドに押し倒される。
な、なんて幸せなんだ。
女の子のベッドに俺は……寝てしまっている。
しかも隣にはアンナがいて……!
「それじゃあおやすみ~。また明日も頑張ろうね」
「お、おやすみ」
明かりを消して、アンナは寝息を立てる。
俺はというと、もう心臓がバクバクでそれどころではなかった。
本当に俺、こんな体験してしまっていいのだろうか。
もしかしなくても、俺はもう死んじゃうのではないだろうか。
「いや……俺もう死んでたんだった……」
つまり……死んだから神様からのご褒美……的な?
外れスキルなんて貰っちゃったけど、この体験ができるなら俺はもう満足です。
ありがとうございます神様。
「んんっ……ん~」
「…………!! 寝よう!!」
アンナの寝息にドキドキしながら、俺は頑張って目をつぶった。




