14.みんな大げさだなぁ
俺たちは被害を受けた冒険者たちを保護し、無事冒険者ギルドに送り届けることに成功した。
正直オーガなんて戦ったことなかったから、どうなるかと思ったが……。
「本当にこの方が倒したんですか!? 一切戦った記録もない新人がオーガを!?」
受付嬢が目を丸くして俺のことを見ていた。
それもそうで、俺は表に出たことなんてないから記録なんて一切ない。
どれだけすごいことかは知らないが、記録がなかった人物が突然何かをやったら驚かれて当然だ。
「本当だ! しかもこの方は無詠唱で魔法を発動する化け物なんだぜ!?」
「嘘ですよね!? ちなみになんですが……オーガはAランクですよ?」
そう言って、受付嬢が上目遣いで聞いてくる。
A……ランク? さっきも聞いたが、ランクってなんなんだろうか。
なんとなく魔物の等級だというのは分かるのだが、どういう等級なのかが分からない。
Aランクだから……大きさだろうか?
あのオーガ、めちゃくちゃサイズデカかったからなぁ。
「もしかしてリッター。あなた分かってない?」
「え? 大きさのことだろう?」
「違うよ!?」
え……? 大きさじゃなかったのか?
それならなんだ。声のデカさとかか?
あいつかなり声大きかったし、近隣住民は色々と大変そうだ。
「あのですね……ランクというのは魔物の強さのことです」
「あ、そうなんだ。ちなみにオーガってどれくらいの強さなんだ?」
尋ねると、二人が苦笑する。
「二番目よ」
「ん? 何が?」
「上から二番目の強さです。つまり……新人が到底倒せるレベルじゃない……なんならベテランだって苦労するレベルです……!」
え……嘘?
マジで?
俺は少し考える。
あいつが上から二番目の強さって……到底信じられないな。
やっぱり何かの間違いなんじゃないだろうか。
「受付嬢さん、この人ヤバいでしょ?」
「天才ですよね?」
「え、ええ……私たちのギルドにはどうやら、とんでもない逸材が来てしまったようですね……」
「いやいや。俺がとんでもない逸材って。俺は普通だよ」
全く、面白いことを言うなぁこの人たちは。
だって俺は家を追い出された外れスキル持ちだぜ?
そんなやつが天才だなんて。
家に残ったイダトの方があまり言いたくはないが、よっぽど天才だろう。
「天才だよ!」
「化け物です!」
「逸材です!」
「え、ええ?」
受付嬢さんとアンナたちが声を大にして叫ぶので、ちょっと呆けてしまう。
どうしてこの人たちはこんなにも俺を褒めるのだろうか。
でもまあ、褒められるのは悪くない。
少し困惑してしまうけど、前世より俺はよっぽど幸せだなぁ。




