12.回復魔法
「ここだ! 仲間が怪我しているんだ……助けてくれ……!」
声がした方に向かっていると、一人の男の姿が見えた。
こちらを見つけた瞬間、安心したような表情を浮かべて手を振っている。
「エイラ! リッター!」
「分かってる!」
「もちろんです!」
俺たちは慌てて茂みの中に入っていき、男と合流する。
そこには、男の他にも二人の男女の姿があった。
命に別状はなさそうだが、怪我が少し酷いな。
これじゃあここから動くことも難しいだろう。
「……っ」
「足が……いてえ……」
「無理はしないようにしてください。俺が今治します」
そう言うと、エイラは驚きの目を向ける。
「リッター様って回復魔法も使えるのですか!?」
「ああ。実家にいる頃、どうにか魔導書を手に入れてな」
「あの……普通、攻撃魔法が得意な人は回復魔法が苦手だったりするのですが……」
「そうなのか? 気にしたことなかったな」
「……リッター様には常識が通用しないことが分かりました。とりあえず治療しましょう!」
俺は頷き、《ヒール》を発動する。
「す、すごい……! 傷がどんどん治っていくぞ!?」
全員の傷を魔法で治す。
実際に他人に《ヒール》を使ったのは初めてだったから少し緊張したけど、どうやら効果はあったらしい。
まあ俺がイダトにいじめられてよく怪我をしちゃってて、それを治すのに使っていたから効果は分かっていたんだけど。
無事治療が完了し、ふうと息を吐いて立ち上がる。
すると男が動揺しながら声をかけてきた。
「今の魔法はなんだったんだ!? あんなの見たことないぞ!?」
「ただの《ヒール》ですよ。特に変わった魔法じゃないので安心してください」
恐らく俺が無詠唱で発動したから、何か変な魔法とでも思われたのだろう。
「……ただの《ヒール》なのか!? と、とにかくありがとう! 感謝させてくれ!」
そう言って、男が頭を何度も下げてくる。
「いえいえ。気にしないでください」
俺は慌てて頭を下げさせるのを止めようとするが、男は何度も感謝の言葉を発した。
ここまで人間に感謝されたことがなかったから、少し変な気分だ。
嬉しい……な。
こんな俺でも役に立てたんだ。
前世では、誰かの役に立つどころかお荷物でしかなかったのに。
「――リッター! エイラ!」
なんてことを考えていると、アンナが声を上げる。
ちらりと見ると、腰に下げている剣を引き抜いて戦闘態勢に入っていた。
「……オーガです! 戦闘準備を!」
「マジか……! 皆さんは俺たちに任せて一度逃げてください!」
そう言うと、冒険者たちは急いでその場から逃げていく。
「ははは……オーガなんて初めて見たんだけど、デカいな」
俺は、目の前に現れた巨体――オーガを眺めて苦笑した。




