11.オーガ討伐
「加入して突然戦闘だなんてごめんね? でも私たちが行かないとダメなの」
馬車に揺られながら、アンナが申し訳なさそうに言う。
そりゃ加入をお願いして早速緊急の依頼だなんて申し訳なくなっても当然だ。
だけど、俺は全然気にしていない。
「いいんだよ。俺たちはもう仲間なんだから、気にすることじゃない」
「リッターさんは優しいんですね」
「優しくはないよ。当然のことを言っているだけ」
そう言うと、アンナとエイラはお互い目を合わせる。
くすりと笑ってみせた後、俺の方に向いた。
「うん。確かにそうかも」
「リッター様にとっては当然のことですもんね」
なんだか二人が嬉しそうな目で見てきている。
俺、何かそんなに嬉しくなるようなことを言っただろうか?
まあ変な雰囲気になるよりかは幾倍もマシなので気にしないことにする。
「そろそろ……かな」
「そうですね。確かオーガと冒険者が出会ってしまったのはこの辺りだと聞いているのですが」
「もうか。んじゃ降りようか」
俺はよっこらせと立ち上がり、馬車から飛び降りる。
周囲は森だ。
木々が立ち並び、風によって葉が揺れている。
「早く冒険者たちを救出しないと。エイラ、リッター。しっかり見て」
「もちろんです!」
「分かった」
俺たちはお互い警戒態勢に入りながら、周囲を探す。
聞いた話だと、オーガはかなり巨大だからぱっと見で分かるらしい。
だから見落とすだなんてことはないと思うんだけど……。
「……!? 何かいるわ!」
「あれは……ゴブリンですね。恐らくオーガと一緒にいる個体だと思います」
「ここは俺に任せてくれ。二人は気にせずオーガと冒険者を探してくれると嬉しい」
そう言って、俺は前に出る。
ゴブリンほどメジャーな魔物の場合、俺でも弱点属性は知っている。
それは――炎だ。
「《ファイア》ッ!」
俺が魔法を放つと、ゴブリンは驚愕の表情を呈していた。
恐らく魔法が詠唱をすっ飛ばして0.1秒で放たれたからだろう。
簡単な魔法ではあるが、不意打ちにはちょうどいい。
無事炎はゴブリンに命中し、倒すことに成功した。
「よし。終わったよ」
「さすがね。やっぱ無詠唱で発動しているのを見ると、毎回驚いちゃう」
「すごいです! 《ファイア》の詠唱って……まあ今はいいですね。とにかくすごいです!」
ははは……照れてしまうな。
俺は頭をかきながら口角を上げていた――瞬間のこと。
「助けてくれ! オレたちはここだ!」
「冒険者の声がする……! こっちだわ!」
どうやら俺たちの騒ぎが聞こえたらしく、恐らく今回帰還が困難になった冒険者が声を上げたのだろう。
俺たちは急ぎで声がした方に向かう。




