107.罪
「離せ……! クソ……離せ……! こんな氷……僕の力で破壊してやる……!」
イダトは何度も左手で氷を殴る……が、ヒビすらも入らない。
焦った様子でイダトは《獄炎》を発動して氷を溶かし、地面を転がって自分の剣を捕まえる。
「舐めやがって舐めやがって舐めやがって! こんな……惨めな負けをするわけにはいかないだろ……! 僕が……僕が負けるわけがないだろう……!」
そう言って、イダトが乱暴に剣を振るいながら迫ってくる。
ああ……もう分かった。
もう、決着は付いた。
「リッター! やっちゃえーー!!」
「やっちゃってください! いけーー!!」
俺は胸に手を当てて、目を瞑る。
これで……もう終わりにしよう。
「《斬影刹那》」
スラッシュの応用魔法――《斬影刹那》を発動する。
言葉を発したと同時に、幾千もの斬撃が空間を切り裂いた。
イダトが持っている剣を切り刻み――そしてイダトすらも斬った。
「あがっ……嘘だ……僕が……どうしてっ……!」
体中から溢れ出す血を眺めながら、イダトは倒れる。
「や、やったーーーー! 勝った! 勝ったよリッターが!」
「やりましたー!! リッター様!!」
ずっと眺めていた二人が俺の方に向かって走ってくる。
そして、ぎゅっと俺の体に抱きついてきた。
「うおっ!?」
勢いに負けて、俺は思いきり倒れてしまう。
けれど、二人は止まらず抱きついてきたままだ。
「よかった……勝ってよかった……!」
「本当に良かったですぅ!」
あはは……でも、実際二人はすごく不安だったと思う。
少し心配かけすぎちゃったかな。
俺は頭をかきながら、二人を見る。
「もう大丈夫だ。終わったよこれで」
本当に……長い兄弟喧嘩だった。
まさかこんなことになるだなんて思わなかったけれど、とにかく全てが終わって本当によかった。
「よし、んじゃイダトだな」
「そうだね」
「はい!」
俺は立ち上がり、倒れたイダトの方に向かう。
アグは死なせてしまったが、彼は死なせるわけにはいかない。
息は……あるな。
「《治癒》」
治癒魔法を発動し、イダトの傷を癒やす。
「しっかり……罪は償えよ」
倒れたイダトを見ながら、俺はぼそりと呟いた。
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