102.《雷電》
「俺は今まで魔法を『ただ発動』することしかしていなかった。だけど、まだ俺には可能性があると思っている」
「はぁ? どういう意味だよ」
同じ技術でも、使い方によっては違う効果を生み出すことがある。
それは俺が現実でもゲームでも経験して理解しているつもりだ。
もちろん、元引きこもりの俺が言えたことじゃあないかもしれないが。
俺は息を吐き、集中する。
《雷電》の効果で周囲には雷鳴が轟いている。
応用するんだ、この《雷電》を。
「知ってるかアグ。雷ってのは秒速何キロで地面に到達するのかを」
俺は剣をアグに向け、にやりと笑う。
「学生時代の教科書に載っていたんだが……秒速10万キロらしい」
「……なんだぁ? それがどうしたって言うんだ?」
「もしかしたらお前が俺に迫ってきた速度よりも――」
《雷電》とぼそりと呟く刹那、轟音が響く。
それと同時に、俺は一瞬にしてアグへと剣を斬りつけていた。
相手との距離は二メートルほど。
その距離を、秒速10万キロ――落雷の速度で移動した。
「――速い」
「なっ……!?」
アグは目を丸くする。
が、すぐに自分が俺によって斬りつけられたことに気がついた。
「なぁぁぁぁぁっ……!?」
彼はよろめきながら、自分の胸に視線を落とす。
「斬られた……このオレが……!? なんだよあの速度……!」
「嘘……でしょ!?」
「本当に魔法を応用しました……!?」
アンナたちも声を上げる。
俺はふうと息を吐いて頭をかく。
「ははは……本当にできるとは思わなかった……」
自分でもかなりの賭けであった。
本当にできるかも分からない机上の空論だった。
だが、どうやら運は俺の味方をしてくれたらしい。
俺はもう一度剣を構え、膝をついたアグに詰め寄る。
「……どうする? アグ」
そう言うと、アグは舌打ちをして睨めつけてきた。
「やるねぇ……リッターさんよぉ……困ったなこりゃ……」
彼は胸に手を置き、ふうと息を吐く。
「あの速度……対処できないかもなぁ……困った困った」
「アグ、さすがにこれは罪が重いぞ」
「分かってるさ、分かってる。だからこのまま捕まったら本当に困るんだよなぁ……」
「ああ。だから――」
そう言おうとした時のことだった。
「《赫棘》」
アグの胸から流れ落ちていた血液が、棘となって俺へと向かってきた。
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