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【書籍化】外れスキル《ショートカットコマンド》で異世界最強〜実家を追放されたけど、俺だけスキルの真価を理解しているので新天地で成り上がる〜  作者: 夜分長文
第一部七章

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102.《雷電》

「俺は今まで魔法を『ただ発動』することしかしていなかった。だけど、まだ俺には可能性があると思っている」


「はぁ? どういう意味だよ」


 同じ技術でも、使い方によっては違う効果を生み出すことがある。


 それは俺が現実でもゲームでも経験して理解しているつもりだ。


 もちろん、元引きこもりの俺が言えたことじゃあないかもしれないが。


 俺は息を吐き、集中する。


 《雷電》の効果で周囲には雷鳴が轟いている。


 応用するんだ、この《雷電》を。


「知ってるかアグ。雷ってのは秒速何キロで地面に到達するのかを」


 俺は剣をアグに向け、にやりと笑う。


「学生時代の教科書に載っていたんだが……秒速10万キロらしい」


「……なんだぁ? それがどうしたって言うんだ?」


「もしかしたらお前が俺に迫ってきた速度よりも――」


 《雷電》とぼそりと呟く刹那、轟音が響く。


 それと同時に、俺は一瞬にしてアグへと剣を斬りつけていた。


 相手との距離は二メートルほど。


 その距離を、秒速10万キロ――落雷の速度で移動した。


「――速い」


「なっ……!?」


 アグは目を丸くする。


 が、すぐに自分が俺によって斬りつけられたことに気がついた。


「なぁぁぁぁぁっ……!?」


 彼はよろめきながら、自分の胸に視線を落とす。


「斬られた……このオレが……!? なんだよあの速度……!」


「嘘……でしょ!?」


「本当に魔法を応用しました……!?」


 アンナたちも声を上げる。


 俺はふうと息を吐いて頭をかく。


「ははは……本当にできるとは思わなかった……」


 自分でもかなりの賭けであった。


 本当にできるかも分からない机上の空論だった。


 だが、どうやら運は俺の味方をしてくれたらしい。


 俺はもう一度剣を構え、膝をついたアグに詰め寄る。


「……どうする? アグ」


 そう言うと、アグは舌打ちをして睨めつけてきた。


「やるねぇ……リッターさんよぉ……困ったなこりゃ……」


 彼は胸に手を置き、ふうと息を吐く。


「あの速度……対処できないかもなぁ……困った困った」


「アグ、さすがにこれは罪が重いぞ」


「分かってるさ、分かってる。だからこのまま捕まったら本当に困るんだよなぁ……」


「ああ。だから――」


 そう言おうとした時のことだった。


「《赫棘》」


 アグの胸から流れ落ちていた血液が、棘となって俺へと向かってきた。


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