9話 ノワール伯爵領⑤
内心驚くことになったその理由は、そう、エルフだエルフが店番をしていたのだ。
まぁ、慌てたらいけないな。まずこの街の地図を入手しないとね。
「すみません。どこにどの店があるか書かれた地図とかってないですか?」
「あー、地図ねちょっと待ってよ。はい、これこの街ノワール伯爵領ノワール市の地図だよ。銅貨一枚ね。」
銅貨、あぁ、銅貨ね…無いね。
「銀貨一枚で良いですか。」
ポーチから銀貨を取り出しながら言う。
「銀貨一枚ね。じゃあ、お釣りは、銅貨九枚だね。」
そう言って彼女は地図と銅貨を渡してくる、それを私は受け取りポーチの中にしまう。
「そうそう、エルフはドラゴンとかが人化していたら気が付くからね。まぁ、何も言わないけど。」
それは俺に向けられた言葉、ではないね。カレンに向けられた言葉。少し動揺しながらカレンの顔を見ると、少しも動揺していないようだ。
「それは、お主の部族だけじゃ。アリシア・ドラグネスよ。」
違った、元から知っていたようだ。というか名前を言っているということは鑑定したのか。もしかして、常時鑑定を発動さしていたり?私の場合は視界の邪魔にならないように自動地図記録と、HP表示だけにしてあるのに。尤もオートマッピングじゃ詳しい店の位置がわからないんだけどね。まぁ、それも、さっき記録したから問題ないけど。
意味が分からない、何故カレンが龍だということが分かったのか。
「えっと、どういうことですか?どうしてカレンが龍だということがわかるのですか?」
私は少し戸惑いながら彼女、アリシアにそう聞く。
「それはね、私たちの部族、ドラグネスは龍系統の種族が人化してステータスまで偽装してても種族のところだけきちんとした偽装じゃない表示が見えるの。まぁ、鑑定スキルがないと意味がなくなるんだけどね。」
「これを言い触らしたりしないんですよね。」
私は少し怯えながらそんなことを聞いた。
「しませんよ、そんなことしたら魔龍様にこの街ごと消されてしまいますよ。」
だけど、そんなことは杞憂だったようだ、街ごと消せるね、カレンならやれそうだすべての魔法を使えるっていうくらいだからね。
そこで、私は気になったことを聞くことにした。
「そういえば、カレン…魔龍って何をやらかしたの?」
そう聞くと、
「我は何もやらかしておらんのじゃ。」
と、返ってきた。がアリシアは違うようだ。
「たとえば、ハイエルフの一人から聞いた話だと、自分の領域に侵入してきた魔王をその魔王の部下を一つの街を中心にその周辺に栄えていた国々をその余波だけで消し去ったとかいろいろありますね。」
だいぶやらかしてるね、カレンって。
「そ、そんなことあったかのう。」
眼が泳いでいる、信用できないな。
「そんなことがあったのか、分かったよ、手綱はしっかりと握っておくようにするよ。」
「そうしてくれると有り難いわね。」
カレンが少し不服そうだがそんなことがあったのなら仕方がないね。
「そろそろ子の街を見て周ってもいいかな。」
「いいよ、ただ地図を見たらわかると思うけどスラム街には近づかない方がいいからね、あそこほかの街に比べたらましだけど人攫いとかが起きてるからね。」
「そうですか、わかりました。ではまた今度。」
「えぇ。また今度ね。」
と、私は店を出ようとしたが、一つ忘れていることに気が付いた。カレンを忘れるところだった。
「カレンいつまでもぼうっとしてないで、さっさと行くよ。」
と、カレンの頭にチョップを入れながら言う。
「我は何をしてたんじゃ?」
「ほらカレンさっさと街の散策に行くよ。」
「分かったのじゃ。」
そんなやり取りがあって私たちは何でも屋から出ていった。まぁ、最後の方にアリシアさんは笑いをこらえていたようだけどね。
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