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M八 言いたいお礼、会いたい気持ち
「いや、たまたま通りかかったからそんな気を使うほどのことでもないよ」
「でも、本当に助かったのよ」
その夜、宿泊しているホテルの廊下で麻梨子と水野は佐久野に昼間の礼を述べていた。
「だからって何か奢ってもらうってほどの事じゃないよ。その気持ちだけ貰っとくってやつで」
「そう…本当にありがとね」
水野と佐久野のやり取りを横で見ている麻梨子。
「その…柊君は?」
麻梨子は恐る恐る佐久野に柊の事を尋ねた。
「え、柊。さぁ?あいつとはクラスが違うから。ホテルに着いてからは会ってないから、自分の部屋に居るんじゃないか?」
「そう…」
「柊には俺から言っといてあげるけど」
「うん…」
「本当に今日はありがとうね」
「いいって。じゃあ俺そろそろ行くけど」
「うん」
水野は手を振りながら佐久野を見送った。
「もう!一緒に居てくれれば楽だったのにね、麻梨子」
「うん…」
「どうしようか、まだ自由時間あるし」
「え?柊君にお礼言わないの?」
「え、佐久野君から言っといてくれるって。それに部屋にまでわざわざ行くのもねぇ…」
「そう…よね…」
水野の言葉に急に沈んでしまう麻梨子。