M七 不可解な感覚
「おい、待て!」
柊に促されてその場から逃げようとしている麻梨子と水野に気付いた高山が慌てて二人を追いかけようとした。
「うお!」
二歩目を踏み出した所で高山は転んでしまった!
「あ~あ、慌てるから」
それを見て柊が言った。実は一目散に二人を追おうとした高山の足を柊が引っ掛けていた。その様子を遠くから水野と麻梨子が見ていたが、転んだ高山を確認すると再び二人は走り始めた。
柊もその二人の姿を確認し、意識を高山に向けた。
「嫌がるコを無理矢理連れて行くのは良くないなぁ~」
高山を見下ろしながら佐久野が言った。
「くそっ!おぼえてろよっ!」
高山はヨロヨロと立ち上がると、吐き捨てるように言ってその場から逃げ去った。
「ヘイヘ~イ」
佐久野が笑いながら言った。
高山は格好を気にする表面だけの男で、実際は何も出来ないことを二人は知っている。そんな高山の後姿を見ながら二人は笑っていた。
「ハハハ。で、どうする?」
佐久野が柊に話し掛けると、柊は麻梨子たちが逃げた方を見ながら、
「そうだな、とりあえず何か適当に食いに行くか?」
言った。
「そうだな」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「助かったわね、麻梨子」
「うん…」
先刻の場所から結構離れた所で二人は息を整えた。
「後で二人にお礼をしなきゃね」
「・・・・・・・」
水野の問い掛けにうわの空の麻梨子。
「ん?どうしたの?」
「え!何だっけ?」
「だから、後で柊君と佐久野君にお礼しなきゃねって」
「あ、そうね」
(ヘンな麻梨子)
水野は麻梨子を見て思った。
麻梨子自身も理解できない気持ちに支配され訳が解からない状態だった。