M二 初印象
回想
背伸びをしていたあの頃・・・
少女は偶然を体験する
三年前。
新しいクラスにも馴染み始めた四月の終わり。
「柊君ってカッコイイと思わない?」
「いきなり何の話よ?」
「この前さ、帰り際にテニスコートの前を通ったのよ、そしたらウチのクラスの柊君が試合してたの。で、そこで友達を待ってたから何気なくそれを見てたの…気が付いたら釘付けで見入っちゃって。私、テニスには興味なかったけど、柊君はカッコ良かったのよ!」
目を輝かせて話すクラスメートと共に麻梨子は教室に居た柊了希に目をやった。
「んー、そんなふうには見えないけど…」
それが朝倉麻梨子の柊了希に対する第一印象だった。
「そのギャップが良いのよ!普段教室では目立たないけど、部活ではヒーローよ!」
「ヒーロー?」
「そうよ、柊君って一年生で個人戦のレギュラー取って、県大会ベスト4なのよ!」
「へ~すごいのね」
我が事のように話すクラスメートに麻梨子は淡々と言った。
「すごいのよ!あ~思い切ってコクっちゃおうかな~」
「本気?」
「何よ!私はあんたみたいに毎日何通もラブレターとか貰えないもん」
僻んで言うクラスメートに麻梨子は、
「やめてよ、私は迷惑してるんだから!」
「へへ、でもどうなのアイツは?」
「アイツ?」
「ほら、しつこくせまって来てた隣のクラスの…」
「ああ、最近来なくなったのわ、諦めたのよきっと」
「いや、あーゆータイプは簡単には諦めないわよ何か新しい手を考えてるのよ」
「まさか…」
『ガラガラ~』
「あっ先生だ!」
言って席に着くクラスメート。
アイツとは隣のクラスの男子、高山学の事。
この高山という男は、中二ながら、とんでもないプレイボーイ!
小学校時代から数え切れない人数の女子と付き合っていて、中学に入った瞬間から朝倉麻梨子に目を付け執拗以上に口説き続けている。
(そういえば二年になってからは全く会ってないわ…。良い事なんだけど)
麻梨子は高山の事を“顔は良いけど、性格は嫌な男子”と思っている。
(あ、連休に美夏とどこかに行こ。遊園地が良いかな)
等と麻梨子の思考は授業とは関係のないものへと変わっていった。